多くの企業が使っている表計算ソフトがあります。Excelです。
Excelは無料ではありません。有料のソフトウェアです。これほど浸透しているソフトウェアも珍しいのではないでしょうか。
単に表計算のためだけに使うのではありません。企業や人によって、色々な用途で使われています。
例えば、申請書や帳票、レイアウト図、調査票、顧客管理、などなど。さらに、ExcelのVBAを使いこなせば、その可能性は飛躍的に広がります。
もちろん、多くの企業ではデータ分析のツールとして使われています。
今回は、「『Excelでデータ分析している≒データ分析素人』ではない」というお話しをします。
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誰もが使えるExcelの分析力、結構いけているかも
ビジネスパーソンにとって、Excelは非常に身近で、使い勝手の良い、便利なツールです。
実際、特別難しいわけもなく、工夫次第で色々と使え、書店に行けば、さらに便利な使い方が書かれている本が売っています。
何よりも、このExcelは、分析ツールとしても十分に使える代物です。
Excelには、様々な関数があり、基本的な分析を可能にするアドインがあり、自由自在にクロス集計することのできるピボットテーブルが、最初から備わっています。
もちろん限界もあります。SASやSPSSなどの商用の高機能な分析ツールや、データ分析者の好みRやPythonに比べれば、まだまだ機能は足りないです。
Excelの拡張力は、意外と侮れない
思い描いてみてください。
もし、この「誰でも使える分析ツールであるExcel」が、SASやSPSSなどの商用の高機能な分析ツールなみの機能を備えたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。
Visual Basic言語の素養があれば、Excelは意外なほどに拡張されます。頑張れば、難しい分析のアルゴリズムを実装することさえできます。
Excelの分析力を高める、アドインが有料で売られていたりします。
Excelの拡張力は、意外と侮れません。
「Excelでデータ分析している≒データ分析素人」ではない
データ分析に長年関わる中で、私の心の中でどうしても割り切れないことが1つありました。
それは、Excelの圧倒的な存在感と拡散パワーです。
多くのデータ分析従者は、「Excelでデータ分析している≒データ分析素人」と考えがちです。私もそのように思っていた時期がありました。
データ分析者たるもの、高度なデータ分析を、RやPython、SAS、SPSSなどの分析ツールを使いこなし、データ抽出するときは、SQLを縦横無尽で扱う。
さらに、ツールに実装されていない手法は、自ら専門書や学術論文を読み漁り、アルゴリズムをC言語でコーディングする。
データ分析者とは、そのようなこともできて一人前だと、ある時期まで私は思い違いをしていました。
しかし、それは大きな間違いであることに気が付きました。
試行錯誤したデータ分析の経験のすばらしさ
どんなにすごいデータ分析手法を使ったとしても、そのデータ分析が活用されなければ、そのデータ分析は存在しない等しいことです。
ストレートに言えば、まったくの無価値です。何かの役に立つはず。自分の将来の糧になる。などと意地を張っても、現実は違います。単なるデータ分析従事者の趣味で終わってしまうだけです。
価値を生むことを前提に、試行錯誤したデータ分析の経験の方が、何倍も将来の糧になります。
少なくとも、私は自分自身を振り返っても、周囲のデータ分析者を見渡しても、そのように感じています。
分析ツールが、分析文化を阻害しているという悲しい現実
価値を生むことを前提に、試行錯誤したデータ分析の経験を、どのように積めばよいのでしょうか。
先ずは、RやPythonなどの無料で使える分析ツールから始めればよいのでしょうか。それとも、SPSSやSASなどの有料の使い勝手の良い分析ツールから始めればよいのでしょうか。
私の経験から考えると、RもPythonもSPSSもSASもダメです。これらの分析ツールを導入しても、実際に分析するのは一部の人だけです。
データ活用の文化を組織内に広がることはありません。では、どうすればよいのでしょうか。その答えがExcelです。
私はある衝撃的な経験をしたことがあります。
データ分析を得意とする者が好むRやPythonなどの分析ツールを前提に、データ活用の文化を組織内に広めようとしたことがありました。しかし、なかなか広まりません。
研修や手順書などを用意しても、思うように広まりませんでした。ただ、ツールの使い方を知っている人が増えただけで、ビジネスの現場でデータ分析する人は、なかなか増えませんでした。
組織内における分析文化を広めるための分析ツールが、分析文化を広めることを阻害しているかのように、私には感じられました。
Excelのパワーが、分析文化を促進したという驚くべき現実
ところが、Excelを前提にデータ分析を広めたところ、急速に広まり、多くの人がなんとなくデータ分析をするようになったのです。
Excelの敷居を低くするパワーに、正直驚きました。
直接RやPythonで分析したほうが、お手軽で早く分析できたとしても、多少面倒な作業が発生してもExcelで分析し活用できるように環境を整えたほうが、データ活用の輪が広まるのです。
輪が広まると、多くの者が当たり前のようにデータ分析をし、そして活用し始めます。
これが、私の心の中で、どうしても割り切れなかったことです。「Excelごときに……」という蔑みの気持ちが私の心のどこかにあったからかもしれません。深く反省すべき点です。
しかし、現実なのだから仕方ありません。重要なのは、データを分析する文化が組織の中で広まり、データ分析が今まで以上に事業貢献することです。
Excelの圧倒的な存在感と拡散パワーを使わない手はありません。
今回のまとめ
今回は、「『Excelでデータ分析している≒データ分析素人』ではない」というお話しをしました。
Excelほど、当たり前のように企業内で活用されているツールは、そうそうありません。
それこそ用途は広く、データ分析のツールとしても活用されています。
実際に、Excelには分析をサポートするための機能が最初から備わっています。Excel関数やピボットテーブル、分析ツール、ソルバーなどです。Excel VBAで、プログラミングをすれば、それこそ色々な分析を可能にすることができます。
そう考えると、かなり素晴らしい分析ツールです。
しかし、「Excelでデータ分析している≒データ分析素人」と、考えてしまうデータ分析者も少なくありません。私も昔、そのように勘違いしていました。
RやPythonで最新の分析手法を使いこなし、SQLでデータ抽出や加工を縦横無尽に使いこなす。場合によっては、C言語で一から実装する。
このようなことでは、組織内にデータ分析文化が醸成されるわけありません。どんなに頑張って広めても、正直RやPythonでは敷居が高く、一部の人しか使ってくれません。
しかし、Excelだと、この使ってくれない壁が低くなります。驚くべきことです。
つまり、データ分析文化を組織内で広めたいなら、Excel前提で組み立てていくことをお勧めします。Excelでできないこと、Excelだとどうしても煩雑になってしまうこと、そのようなことを、他のツールで補助するぐらいが丁度良いかと思います。
まずはExcelから始めよ! です。Excelレベルのデータ分析やその利活用すらできないのに、高度な分析ツールを使いこなしデータ分析で成果をだすのは至難なことだと思います。