第75話|何やら余計な業務が増えたかも? IT化の不効率を加速させたビッグデータブーム

第75話|何やら余計な業務が増えたかも? IT化の不効率を加速させたビッグデータブーム

IT化して楽になるはずが、従来よりも余間暇が掛かっている。

IT化が進むほど不効率になる「IT化の不効率」という現象が、日本各地で見受けられます。特に企業内で。

例えば……

IT化で、紙で申請していたものを
システム上で申請し運用できるようになり効率化!

のはずが……

……ペーパーレス化どころか
システム上で申請したものを紙でも印刷し、
別途提出する

……さらに、
提出物を受けっとった担当者は、
システム上の記載と紙の記載内容を目で照合する

……提出する側も、
システム上でどのように申請すればよいのか分からず
右往左往しながら提出する

IT化によるシステムの導入コストと運用コスト、さらには今までにない余計な工数がコストとしてのしかかってくる。

程度の大小はありますが、効率化を目指したIT化が、不効率の元凶になり、余計なコスト増というものを産みだしているケースが多々あります。

2000年前後のITブームから日本企業のIT化は進みましたが、日本のGDPは約20年間ほぼ同じです。他の先進国のGDPは、普通に伸びているのにです。さらに、日本生産性本部が出している日本の生産性の統計値も、ほぼ20年間変化がありません。

近年のビッグデータブームにより、その現象は目を覆いたくなることもあります。

今回は、「何やら余計な業務が増えたかも? IT化の不効率を加速させたビッグデータブーム」というお話しです。

魔法の箱

IT化の不効率化は、すでにビッグデータブーム以前からありました。

私の感覚では、ビッグデータブーム時に、耳に心地よいカタカナ用語とともに、このIT化の不効率化に拍車がかかったのではないかと感じています。

「ビッグデータ! ビッグデータ! ビッグデータ!」と耳がタコになるほど聞かされれば、経営者も現場も気になります。意識の高い人ほど気になります。

いったいビッグデータとは何ぞや??? という感じで講演会に参加したり書籍を買って読んだり、ニュース記事を読んだり。

例えば、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール。

一時期、BIツールを導入すれば、データを使って色々な問題が解決するかのような錯覚があったような気がします。「BIツール≒魔法の箱」という勘違いです。

BIツールそのものは従来からあり、最近のBIツールはかなり使いやすくなっています。

データ活用が身近になりことはあっても、それがビジネス成果になるかどうかとは別問題です。当たり前と言えば当たり前ですが、そのような錯覚が何となくあったのは事実です。

BIツールだけでなく、DMP(データマネジメントプラットホーム)もしかり、Hadoopもしかり、データレイクもしかり、ディープラーニングもしかり、AI(人工知能)もしかりです。全然レイヤーが異なりますが、似たような錯覚があったかと思います。

ただの箱

BIツールが魔法の箱ではないことは、導入したり使ってみたりすればすぐに分かります。ダッシュボードという出力画面に、集めたデータの集計結果を表示するだけだからです。

ダッシュボードをもとに、気になる箇所を掘り下げたり、各個人の視点で集計し直したりすることができます。どう掘り下げるのか? どの集計し直すのか? 今までデータ分析したりデータ活用に縁が遠い人にとっては、なかなか難しい要求です。

問題が解決する方向に向かい、気になる箇所を掘り下げたり、各個人の視点で集計し直したりしなければ、問題解決に活用することは難しいことでしょう。

そもそも、BIツールなどで扱うデータを整備するのも大変です。

地味だけど重要なデータ整備

日ごろから気を付けていないと、データはどんどん汚くなります。日ごろから、掃除しないと汚くなる部屋や机の上と同じですね……

多くの場合、データ活用の進んでいない企業ほど、当然ですが汚いです。汚いデータをBIツールなどで扱っても、扱えません。

汚いデータは信用できない、という視点もありますが、それ以前の問題として、複数のデータソースのデータを連携できないという問題があります。

複数のデータソースを掛け合わせて集計などするときに、その掛け合わせるためのキー(鍵)となる情報が必要になります。例えば、日付や取引先の企業情報などです。

日付のフォーマットや粒度(例:年・月・日・時間など)が、データソース間で異なれば、連携はされません。連携するために揃える必要があります。ひどい場合には、同じデータソースのはずなのに途中からデータフォーマットがさり気なく変わっていることさえあります。

取引先の企業情報も、企業名称が入力する人によってばらばらだったりします。企業IDのルールすらバラバラだったりします。そんなことないだろ! と思うかもしれませんが、部署が違えばルールも異なる、会社が異なればルールも異なる、ということが多々あります。特に、企業合併したようなケースだと、このようなことは当然のこととして起こります。

BIツールなどに読み込ませるデータの整備は、地味だけど非常に重要です。

仮にBIツールなどが魔法の箱だとしても、その魔法の箱の中に入れるデータを整備する必要があります。

データ分析の「活用の視点」がないと、やっぱりダメだよね

そして何よりも重要なのが、データ分析の「活用の視点」です。

データ分析の「活用の視点」とは、集めたり整備したりしたデータを使い、どのようなことに活用したいのか、という視点です。この視点がないと、後々苦労します。

このような視点がないまま、データ活用やデータ分析を目指すことは普通ないだろ! と思われがちですが、昨今のビッグデータブームの特徴として、このようなことが多々見られます。

「何かビッグデータ的なことをやれ!」
「我が社も、AI(人工知能)だ!!」
「デジタルトランスフォーメーションで生まれ変わるぞ!!!」

データ活用という視点で考えれば、どのように活用するのかがないと、どのような分析結果や予測結果が必要なのかも分かりませんし、どのようなデータが必要なのかもわかりません。

もちろん、一つの考え方として、結論先行で縛られると自由な発想が阻害されるため、あえて「データ分析の『活用の視点』」を無視し進める…… という考え方もありますが。

まだデータ分析などで成果を出していないなら、データ分析の「活用の視点」をあらかじめ定めておいたほうが、手っ取り早いです。スピーディで効率的です。

そして何よりも、データ分析の「活用の視点」があれば、このビッグデータに伴うIT化によって、データを絡めて「業務がどのように変わるのか」が見えてきます。

このデータを絡めて「業務がどのように変わるのか」が見えることは、データ分析で確実なる成果を望むなら、非常に重要なことです。

単純に前後比較すればいい

データ分析の「活用の視点」があれば、データを絡めることで「業務がどのように変わるのか」が見えてきます。

「業務がどのように変わるのか」が見えるということは、どういうことでしょうか。それは、「IT化・データ分析活用化の前後の変化が見える」ということです。

「IT化・データ分析活用化の前後の変化が見える」ということは、どういうことでしょうか。それは、それによる工数の変化などが見るということです。
工数の変化などが見るということは、どういうことでしょうか。それは、システムの導入コストや運用コスト、データ分析活用による売上増や効率化の程度も見えてくるということです。

少なくとも、ある程度ざっくりかもしれませんが見積もます。ビッグデータに伴うIT化の効果が見積もれます。しかも、金額換算で見積もれます。もちろん、工数の変化などが見えるということは、動き方の変化も見えるということです。

この見積もる、ということが非常に重要です。効果のあたりが付くからです。楽天的に考えたときの効果や、悲観的に考えたときの効果など、いろいろな効果を見ることができることでしょう。

例えば、どんなに楽天的に考えても不効率になったりコスト増になるのならば、どこかを変えなければなりません。その検討が少なくともできます。

例えば、どんなに悲観駅に考えても効率化し売上や利益が増大するならば、そのまま計画通り進めればよい、ということになることでしょう。

要するに、「単純に前後比較すればいい」のです。その前後比較をするためには、データ分析の「活用の視点」が必要なのです。

特に、まだデータ分析でそれなりの成果を出していないならば、このデータ分析の「活用の視点」をもっておいたほうがよいでしょう。余裕がでたら、結論先行で縛られると自由な発想が阻害しないため、あえて「データ分析の『活用の視点』」を無視し進めるという方法もよいでしょう

今回のまとめ

今回は、「何やら余計な業務が増えたかも? IT化の不効率を加速させたビッグデータブーム」というお話しをしました。

IT化の不効率化は、すでにビッグデータブーム以前からありました。ビッグデータブーム時に、耳に心地よいカタカナ用語とともに、拍車がかかったのではないかと思います。

例えば、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール。BIツールを導入すれば、データを使って色々な問題が解決するかのような錯覚。魔法の箱ではないかと思ってしまうような勘違いです。

DMP(データマネジメントプラットホーム)もしかり、Hadoopもしかり、データレイクもしかり、ディープラーニングもしかり、AI(人工知能)もしかりです。全然レイヤーが異なりますが……

魔法の箱ではないことは、導入したり使ってみたりすればすぐに分かります。

地味だけど重要なのが、データの整備のところ。どのようなデータを集めるのかもそうですが、集めるデータが分かっていても、その品質を維持することは結構大変です。で、単にデータを集めればよいというわけでもなく、データ分析したり活用しやすい形に下降する必要もあります。

そして何よりも重要なのが、データ分析の「活用の視点」です。

どのように活用するのかがないと、当たり前ですが、どのような分析結果や予測結果が必要なのかも分かりませんし、どのようなデータが必要なのかもわかりません。

一つの考え方として、あまり縛られず自由に考えるというのもありますが、スピードや効率を求めるならデータ分析の「活用の視点」をあらかじめ定めておいたほうが、手っ取り早いです。

データ分析の「活用の視点」があれば、データを絡めることで「業務がどのように変わるのか」が見えてきます。

「業務がどのように変わるのか」が見えるということは、「IT化・データ分析活用化の前後の変化が見える」ということです。

「IT化・データ分析活用化の前後の変化が見える」ということは、それによる工数の変化などが見え、システムの導入コストや運用コスト、データ分析活用による売上増や効率化の程度も見えてきます。少なくとも、ある程度ざっくりかもしれませんが見積もます。

その見積もることが重要です。

見積もれば、どんなに楽天的に考えても不効率になったりコスト増になるのならば、どこかを変えなければなりません。その検討が少なくともできます。

やっぱり、「データ分析の『活用の視点』があると嬉しいよね」ということで、この点を緩くでも厳密でも構いませんが、持っておいたほうが良いでしょう。