ここ数年、データを分析することへの関心が、多くの人や企業で高まっています。
その表れでしょうか、社内データサイエンティストが急増しています。そのような中、上手くいっている企業もあれば、そうでない企業もあります。
そして、次のような悩みを、最近よく聞くようになりました。
「うちのデータ分析、あまりビジネス貢献していない……」
何がいけないのでしょうか。
本当にデータ分析でビジネス貢献できていないのでしょうか。それとも、ビジネス貢献できているのに、その成果を上手く表現し伝えれていないのでしょうか。
一番残念なのが、データ分析でビジネス成果を出しているのに、その成果を上手く表現し伝えることに失敗し、データ分析がビジネス貢献していないと誤解されているケースです。
今回は、「そのデータ分析、ビジネス貢献していないよ、と言われたら試してみるべき表現法」というお話しをします。
Contents
ただ今、社内データサイエンティスト急増中
ここ10年、面白い現象が起こっています。
- 「データがあるから、何か分かるでしょ?」
- 「とりあえず、AI(Deep Learning)で何かやれ!」
- 「よし! デジタルトランスフォーメーションだ!!!」
このような合言葉とともに、データサイエンスの専門部署を、社内に設置する企業が増えています。専門部署とは言わないまでも、専任の担当者がいる企業も少なくありません。
私がデータ分析を、実務でやり始めた20年前にはなかったことです。
なぜ、急に社内データサイエンティストが増えたのでしょうか。
データが増える増える
2000年ごろからの急激なIT化が、日本企業では起こりました。
IT化すると便利になるだけでなく、副産物として大量のデータが発生します。そのデータを蓄積すれば、当然ですが、データはどんどん溜まっていきます。
つまり、このIT化の副残物として、大量のデータが蓄積されるようになりました。
さらに、そのデータの蓄積するための環境が整いやすくなりました。単純にデータを蓄積するストレージの価格が下がりました。クラウドが発展し、手軽にそのストレージを構築することもできるようになりました。
データを分析する環境の進化も見逃せません
2000年ごろのデータ分析ツールと言えば、SPSSやSASなどの高額なツールがメインでした。そのため、ある程度資金力があるか、データ分析の意識の非常に高い企業しか導入していませんでした。
しかし、SPSSやSASなどに匹敵する分析ツールとしてRやPythonといった無料のツールが浸透しました。
たとえば、Rは1990年代から利用しているデータ分析者はある程度いましたが、一般向けという感じではありませんでした。
なぜならば、マニュアルなどはすべて英語でした。ところが、ここ10年ほどで、分かりやすいRの日本語の本が出版されるようになりました。
このことは非常に大きいことです。非常に身近になったからです。
要するに、コストや分析コストが減り、手軽にデータ分析をすることができるようになりました。
そのような中、ドットコム企業を中心に、データ分析を武器に、市場を席巻する企業が脚光を浴びました。
データを生かすも殺すも、その腕次第
これからも増え続けるデータ、どのように調理し自社のビジネスに生かすのか。社内データサイエンティストの腕にかかっています。
データを生かすも殺すも、その腕次第です。
社内から、非常に大きな期待をかけられ、注目度はうなぎのぼりでしょう。もしくは、魔法使いかなにかと勘違いされたり、日本社会ではあまり見られなかった仕事をするので、変人扱いされる人もいるかもしれません。
何はともあれ、データを分析することに対し高い関心を示し、そのような人財を社内に抱えるようになった企業が増えました。
私としては、仲間が増えて非常に喜ばしい限りです。
人はそろえたけど、ビジネス貢献できていない……
ここ10年の間にデータ分析に積極的に動き出した企業、その後どうなったのでしょうか。
私が感じた印象では、その多くはあまり上手くいっていません。実際、いくつかの企業から、次のような悩みを聞きました。
「うちのデータ分析、あまりビジネス貢献していない」
そもそも、データ分析でビジネス貢献するとは、どういうことでしょうか。
たとえば、その企業の収益や生産性、品質、コスト、スピード、安全性、意欲、環境などといったものに対し、良いインパクトをもたらすことです。
つまり、「うちのデータ分析、あまりビジネス貢献していない」とは、「データ分析者や機械学習エンジニアといったデータサイエンス人財をそろえ、さらにデータ分析ツールやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどの分析基盤を整えたけど、このようなビジネス成果を十分にもたらせていない」ということです。
データ分析は必須ではないという現実
1歩引いて考えてみてください。
多くの企業内の課題は、データ分析は絶対必須というものではありません。ビジネスの世界では、データ分析をしてもしなくても問題ないのです。
このような中で、あえてデータ分析をするからには、何か違いを見せる必要があります。
では、どのような違いを見せればいいのでしょうか。
非常にシンプルな話しです。データ分析を活用することで、著しく良いインパクトをもたらし、そのことを分かりやすく表現し伝えればいいのです。
データ分析の成果は金額換算せよ
一番残念なのが、データ分析でビジネス成果を出しているのに、その成果を上手く表現し伝えることに失敗しているケースです。
分かりやすく表現する必要があります。そうしないと、「データ分析≒無駄」となってしまい、ビジネスに貢献しないデータ分析という面倒な業務が社内に増えた、と思われてしまいます。
もし、ビジネスの世界でデータ分析をするのなら、その成果は金額で示したほうがいいでしょう。金額で示せばインパクト大です。そのほうが、そのデータ分析の価値がストレートに伝わります。
お試し程度のデータ分析ならまだしも、「本格的にデータ分析を実務で活用しようとする」もしくは「すでに活用している」のであれば、その効果を少なくとも定量的に、できれば金額換算し示したほうがよいでしょう。
今回のまとめ
今回は、「そのデータ分析、ビジネス貢献していないよ、と言われたら試してみるべき表現法」というお話しをしました。
ここ10年、データを分析しビジネスに活かそうとする企業が増えています。その表れなのか、社内に専任の担当者を置いたり、部署を作ったりする企業が増えています。その結果、社内データサイエンティストが増えています。
しかし、そのような多くの企業は、十分なビジネス成果をデータ分析から得られていないようです。
今後もデータはどんどん増えていきます。データ分析を武器に市場を席巻する企業は、今後も登場し続けるでしょう。
正直なところ、ビジネスにデータ分析は必須でありません。無理に使う必要もありません。そのような中、あえてデータ分析を使うのであれば、何か違いを見せる必要があります。
そして、違いをどう表現して見せるのか、という問題もあります。
なぜならば、データ分析でビジネス成果を出せても、その成果を上手く表現することができず、「データ分析≒無駄」と変な烙印を押されたケースも知っています。
もし、あなたがビジネスの世界でデータ分析をするのなら、その成果は金額で示すべきです。
どうもデータ分析の成果が上手く伝わっていないなと感じていたら、ぜひデータ分析のビジネス成果を金額換算し、社内で示し伝えてみてください。きっと上手くいくと思います。