日経新聞の12月1日(土)の朝刊の一面の端っこに「『文系学生も数学を』 経団連、大学に改革提言へ – データ時代の人材求める –」という記事が掲載されていました。
一言で言うと「文系と言えども数学を学べ。このデータ時代に必須だ」ということです。
現在の文科省の学習指導要領では、すでにデータ分析・統計学教育は必須となっています。小学校1年生から高校3年生まで、m何かしら学ぶことになっています。
実際に、数学Ⅰの単元に「データの分析」というものがあり、センター試験入試でも当たり前のように出題されています。
そして、次期学習指導要領案(2022年度開始)を眺めてみると、データ分析・統計学教育は強化されています。
今回は、「文系のほうがデータ分析力は嬉しいスキルかもしれない。時代の求めに応じるためのスキル獲得のための処方箋」というお話しです。
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次期学習指導要領案(2022年度開始)
次期学習指導要領案(2022年度開始)を眺めてみると、データ分析・統計学教育は、結構強化されています。
高校数学の数学1の単元として「データの分析」が追加されたときは、衝撃的でした。
なぜならば、数学1の単元となるということは、大学入試のセンター試験で必須になるからです。受験で必要となるため、受験生は勉強しなければならないですし、教える側も教えられるようにならなければなりません。
さらに今回、数学Bの「統計的な推測」が、数学Bの中で必須になるそうです。大学入試では今まで、「統計的な推測」が外される傾向がありました。今回必須化されることで、入試で数学Bが受験科目の場合(多くの場合理系)、「統計的な推測」が登場することになります。
そもそも、「データの分析」が登場したのは、最近の学習指導要領ですので、ある年代以前はデータ分析の教育を受けていません。
つまり、世代でデータ分析教育のギャップが生じている現状があります。
データ活用スキルは、ビジネスパーソンにとって当然のスキルになりつつある
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)といった企業が、特定のデータを独占しビジネスを飛躍するために、上手く活用していることは、公然になっています。
Amazonのレコメンド(お勧め商品)に誘われて、商品を買ってしまった人も少なくないと思います。
そして、表には出ていない「データ分析・活用で業績を伸ばした企業」はいくらでもあります。表に出す必要がないので、表に出していないだけで、結構上手くやっています。日系の企業でも、そこそこあります。
そこでは、ビジネスパーソンにデータ分析・活用のスキルが求められます。
文系・理系関係ありません。データをもとにビジネス成果を繋げるには、このデータ分析・活用のスキルがものをいいます。
文系出身者がリードしているビジネス現場ほど、データ分析・活用の成果が出やすい
なんとなくの印象です。
営業やマーケティング、カスタマーサポート系の収益に近いというか顧客に近い部署ほど、文系の人が多い気がします。逆に、開発や生産、研究系の収益と距離がある部署(ビジネス成果を得るまでのタイムラグがある)ほど、理系の人が多い気がします。
気のせいかもしれませんが、そのように感じます。
もちろん、開発や生産、研究系でデータ分析・活用してもいいでしょう。いいというか、理系が多いので数学アレルギーもあまり大きくなく、データ分析・活用が進みやすいかもしれません。
そのかわり、会社全体の業績という視点で考えると、タイムラグがあります。
一方、営業やマーケティング、カスタマーサポート系の収益に近いというか顧客に近い部署で、データ分析・活用を推し進めると、タイムラグが小さくすぐに収益を左右します。
先ほど例にあげた、Amazonのレコメンド(お勧め商品)で考えると分かりやすいと思います。
「Amazonのレコメンド(お勧め商品)に誘われて商品を買う=その時点でAmazonの売上があがる」
レコメンド(お勧め商品)は、「比較的簡単にでき、かつ、収益をあげやすいデータ分析・活用」の1つでしょう。なぜならば、必要なデータは、どのような企業にもあるであろう購買履歴データ(もしくは、受注データ)だからです。もちろん、不特定さ数を相手にしているリアル店舗(ネット上の店舗でない)のPOSデータでは無理かもしれませんが…… (ID付きPOSデータがあれば可能ですが)
つまり、文系出身者がリードしているビジネス現場ほど、データ分析・活用の成果が出やすいのです。
苦手意識の高い文系の処方箋「文部科学省の算数・数学の指導要領」
とは言え、数学アレルギーが、データ分析に対し苦手意識を醸成していることも確かです。
苦手意識の高い文系の処方箋として、どのようなものがあるでしょうか。
文部科学省の算数・数学の指導要領を参考にすればいいのです。子供たちがこの指導要領をもとに、着実にスキルを身に着けていっているからです。
幾つか、参考になる書籍やサイトを紹介します。
「データの活用」の授業 ――小中高の体系的指導で育てる統計的問題解決力
「データの活用」の授業 ――小中高の体系的指導で育てる統計的問題解決力
東洋館出版社 (2018/3/6)
https://www.amazon.co.jp/dp/4491034583/
この書籍の目次を眺めるだけでも、どのようにスキルを身に着けていけばいいのか、非常に参考になります。
以下は、書籍の目次です。
第1章 算数・数学教育における統計教育
算数・数学教育における統計教育
統計教育と数学的活動
統計教育と社会とのつながり
統計教育の授業づくりに向けて
小中学校の統計の学習内容の一覧第2章 学校種別「データの活用」の授業
[中学校] 小学校から中学校へ
[小学校] 幼稚園から小学校へ
小学校算数科の新しい内容
授業例1 小学校第1学年 かたちのなかまわけ
授業例2 小学校第2学年 表とまるのグラフ
授業例3 小学校第3学年 表と棒グラフ
授業例4 小学校第3学年 さまざまなデータの活用
授業例5 小学校第4学年 二次元の表
授業例6 小学校第4学年 グラフの見方
授業例7 小学校第5学年 測定値の平均
授業例8 小学校第6学年 柱状グラフと代表値
コ ラ ム 総合的な学習と統計(小学校)
中学校数学科の新しい内容
授業例9 中学校第1学年 度数折れ線と相対度数
授業例10 中学校第1学年 累積度数
授業例11 中学校第1学年 相対度数と確率
授業例12 中学校第2学年 箱ひげ図
授業例13 中学校第3学年 標本調査
コ ラ ム 総合的な学習と統計(中学校) [高等学校] 中学校から高等学校へ
授業例14 高等学校数学I データの相関
授業例15 高等学校課題学習 統計的推測
高校高等から大学へ
コ ラ ム グローバル人材と統計教育
2章の授業例を見て頂ければ、どのような順番で子供たちが学んでいっているのかが、何となく想像がつくかと思います。
単純な、表や棒グラフなどから始まり、代表値や標本調査について学ぶ、高校卒業するまでには統計的推測まで進みます。
高校生レベルに関しては、センター試験入試などの参考書を中心に、結構充実していますので、以下からは小中学校に絞り紹介します。
すべての子どもを算数好きにする「データの活用」の「しかけ」と「しこみ」
すべての子どもを算数好きにする「データの活用」の「しかけ」と「しこみ」
東洋館出版社 (2018/7/20)
https://www.amazon.co.jp/dp/4491035520/
最初の最初の第一歩は非常に重要です。
つまり、小学校でどのようなことを、どのように学んでいるかを知ることは、データ分析・活用のスキルアップの第一歩としては、非常に参考になります。
この書籍も、目次を眺めるだけで非常に参考になります。
以下は、書籍の目次です。
I章 「データの活用」領域でこそ大事にしたい「しかけ」と「しこみ」
1 算数の授業づくりにおける「しかけ」と「しこみ」
2 「データの活用」領域で育む「数学的に考える資質・能力」
3 「データの活用」領域で大事にしたい「しかけ」と「しこみ」II章 「データの活用」実践事例
■1年
どんな花がさくのかな? [かずしらべ(基礎)] アサガオのたねをなんこあげたらいいかな? [かずしらべ(活用)] ■2年
人気の動物は何かな? [ひょうとグラフ(基礎)] わかりやすくあらわそう [ひょうとグラフ(活用)] ■3年
ろう下を走っている人をへらそう [ぼうグラフと表(基礎)] 安全に登下校するために交通量を調べよう! [ぼうグラフと表(基礎)] 将来なりたい職業! [ぼうグラフと表(基礎)] たてわり班でやりたい遊びはみんな同じかな? [ぼうグラフと表(活用)] だれが一番上手かな? [ぼうグラフと表(活用)] ■4年
一番人気のラーメンは? [折れ線グラフと表(基礎)] どちらのラーメン屋に行きたい? [折れ線グラフと表(活用)] 空気でっぽうで音階をつくろう [折れ線グラフと表(活用)] ■5年
じゃんけんが強いのはだれ? [百分率とグラフ(基礎)] 比べられない! [百分率とグラフ(基礎)] 割合だけじゃわからない! [百分率とグラフ(基礎)] 算数が好きなのはどちらかな? [百分率とグラフ(活用)] ■6年
どちらのくじをひこうかな? [資料の調べ方(基礎)] わたしたちの時間の使い方 [資料の調べ方(基礎)] データの収集方法は公平にしないと [資料の調べ方(活用)] なぜ反復横跳びの結果は伸びているの? [資料の調べ方(活用)] 公平にチーム分けをしよう! [資料の調べ方(活用)] テレビの視聴時間の傾向は? [資料の調べ方(活用)]
II章 の「データの活用」実践事例を参考に、ビジネス事例を作り社員教育してもいいかもしれません。
ちなみに、これからの子供たちは、このあたりの内容を、小さなころから少しづつ学んでいくのです。
楽しく学ぶ! 中学数学の統計「データの活用」
楽しく学ぶ! 中学数学の統計「データの活用」
東京図書 (2018/10/9)
https://www.amazon.co.jp/dp/4489022999/
こちらは、中学生です。以下目次です。
第1部:理論編
第1章 今なぜ統計教育が必要とされるのか
第2章 「データの活用」の指導内容の概観と要点
第3章 統計に関する基本的な知識
第4章 諸外国での統計教育の様子
第5章 授業で使えるサイトや統計ソフト
第6章 統計実践で使える教材の提案第2部:実践編
○第1学年での指導事例? 最強の紙コプターを開発しよう
○第1学年での指導事例? 「お箸DEピンポン」が上手な人の傾向
○第1学年での指導事例? 貸し出し靴を買い替えよう! ~統計的確率~
○第2学年での指導事例? 夏の避暑地はどこに行く? ~「並行箱ひげ図」の活用と統計的探究プロセスの実現~
○第2学年での指導事例? タッチ・ザ・ナンバーズ ~周辺視の能力の高い人はどんな人…?~
○第2学年での指導事例? 「スクラッチくじ」で当たる確率は?
○第3学年での指導事例? 標本調査のよさを実感できる授業 ~批判的な考察、無作為抽出、標本平均に対する標本数の影響に焦点を当てて
○第3学年での指導事例? データで切り開く未来 ~愛知県の魅力度調査~
○第3学年での指導事例? 辞書の見出し語数を標本調査で求めてみよう
こちらも、第2部の実践編をもとに、ビジネス事例を作り社員教育してもいいかもしれません。
ちびむすドリル
実際、小学校6年生レベルでは、どのような問題を解いているのだろう?
このように思っている方もいるかもしれません。
「ちびむすドリル」というサイトに、「資料の調べ方|度数分布表・柱状グラフ」の練習問題プリント(https://happylilac.net/keisan-siryo.html)が公開されていますので見てみてください。
以下から、問題と答えを一括ダウンロードできます。
問題
https://happylilac.net/siryosirabekata.pdf
答え
https://happylilac.net/siryosirabekata-ans.pdf
今回のまとめ
今回は、「文系のほうがデータ分析力は嬉しいスキルかもしれない。時代の求めに応じるためのスキル獲得のための処方箋」というお話しをしました。
時代はデータ分析・活用スキルを求めています。あえて時代に逆行するという生き方もありますが、時代の波に乗るというか時代の波を作るという生き方もあります。
今の子供たちは、小学校1年生から高校3年生まで、データ分析・統計学の授業を受けて育っています。
つまり、データ分析・活用という観点で考えると、ある世代を境に世代ギャップが教育上生じています。
そして、現在多くのビジネスパーソンは、当然ながら十分なデータ分析・統計学の授業を受けていません。
ではどうすればいいか?
答えは単純です。学び身に着ければいいのです。
都合のいいことに、そのための手順が「文部科学省の算数・数学の指導要領」として整備されています。使えそうなドリルや書籍なども、多数あります。
これらを参考に学ぶことで、少なくとも最低限の知識とスキルは身につくと思います。