ビッグデータの時代と言うものの、データを眺めてみれば、何がビッグなのかわからない……
少なくとも、勝手に溜まるデータがビッグになっている、ということは言えそうです。
勝手にビッグになっているデータの代表が、Webアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータです。
そして、どのような企業にもあるのが売上や受注などの結果系データです。
今回は、「売上や受注などの結果系データしかないとき、どう分析する?」というお話しです。
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勝手に溜まるデータは、ほぼ汚い
先ほど、勝手にビッグになっているデータの代表として、Webアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータを上げました。
残念ながら、勝手に溜まるデータの多くは、さぁ分析するぞ! となったとき、そのままでは使えません。
なぜならば、データ分析という観点から考えると、汚くて使えないからです。
汚いから使えない? という疑問もあるかもししれませんが、汚いものはキレイにすればいいので、時間さえかければキレイにはなります。
結局、データは意識して溜めないと溜まらない
その中で、Webアクセスログは比較的綺麗に蓄積されますが、それでも、そのまま分析では利用できません。
分析のための前処理が、かなりあります。そもそも、Webアクセスログそのものは、そのままExcelで扱えるようなデータ形式でないため、そのための処理が必要になります。
Webアクセスログを取得する時、タグをWebサイトに埋め込めばすみますが、多くの場合、欲しいWebアクセスログを取得するためには、それなりの実装しなければなりません。分析中に、実装ミスに気づくこともままあります。
何を言いたいかというと、ビッグデータの時代とは言え、結局のところデータは意識して溜めないと溜まらない、という現実は、今も昔も変わらないということです。
C.L.ハルの「S-O-R理論」
勝手に溜まるデータの多くが、結果系のデータです。
例えば、Webアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータも、何かの結果を反映したデータです。
心理学の世界にC.L.ハルの「S-O-R理論」(Stimulus-Organism-Response Theory)という概念があります。非常にシンプルな概念です。
「S」(Stimulus)は刺激、「O」(Organism)が有機体、「R」(Response)が反応です。データ分析の世界でも、そのままこの概念を活用することができます。
結果系のデータは「R」(Response)になります。「R」(Response)が生まれるためには、「S」(Stimulus)が必要になります。
例えば、マーケティングのキャンペーンは「S」(Stimulus)で、「O」(Organism)が消費者で、「R」(Response)が売上などになります。
データ分析ではよく、「S」(Stimulus)と「R」(Response)のデータから、「S」(Stimulus)と「R」(Response)の関係を統計モデルなどの数理モデルで表現したりします。
多くの場合、「O」(Organism)がどのようになっているのか分からないからです。
「S」(Stimulus)がないけど、「R」(Response)がある。あなたならどうする?
そして、「R」(Response)に関するデータは、キレイ・汚いかどうかを考えなければ、結構溜めっている企業が多いようです。
売上系のデータは事業をする上で必須ですし、Webのアクセスログもタグを埋め込んでおけば何かしらデータが蓄積されます。センサーデータも、センサーを設置すればデータはどんどん発生します。
しかし、「S」(Stimulus)に関するデータは、本当に意識しないと蓄積されません。
例えば、マーケティングのキャンペーンの情報はパワポなどの資料としては残っているけど、データ分析できる形で蓄積されていない。Webもリスティングの運用やSNS施策を、Web系の広告代理店に丸投げで何をやっているので、記録されているようで、実は分析できる形では記録されていない。
センサーデータも、例えば、生産機器の温度が上がったので職人技でボトルを0.001ミリ単位で調整したとか、生産設備のメンテンナンスや工場の掃除など、何をやったのかの記録は具体的に残っていない。
要するに、「S」(Stimulus)と「R」(Response)の関係を分析が、「S」(Stimulus)がないためにできない。
そこで、「R」(Response)にデータしかない場合、データ分析はできないの? という疑問が湧いてくるかもしれません。
通常か? 異常か? なら見れる
売上や受注などの「R」に関するデータしかないとき、どうする? ということで、ベタな分析方法は、異常検知になります。
異常検知であれば、「R」に関するデータだけでも、分析しようと思えばできます。
通常の「R」(Response)の値と比べてどうかを見るだけですから…… とは言っても、季節変動やトレンドなど考えるべき要因は多々あります。
例えば、キャンペーンであれば、通常の売上ではなく、多くの場合、売上拡大(異常な売上)を手にするためにやります。
であれば、売上の異常検知で、キャンペーン期間中に「異常値」が検出されなければ、もしかしたらキャンペーンは上手くいっていないとも解釈できます。
今回のまとめ
今回は、「売上や受注などの結果系データしかないとき、どう分析する?」というお話しをしました。
ビッグデータが日本社会で叫ばれて久しいですが、具体的に何がどうなっているのか見えにくい。少なくとも、勝手に溜まるデータがビッグになっている、ということは言えそうです。
しかし、溜まっているデータを眺めてみれば、それはWebアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関する、どちらかというと結果系のデータが多いようです。
心理学の世界にC.L.ハルの「S-O-R理論」(Stimulus-Organism-Response Theory)という概念があり、その概念をベースに考えると、売上や受注などの売上に関するデータは、「R」(Response)のデータになります。
残念なことに、データ分析する際、「R」(Response)のデータがあるのに「S」(Stimulus)に関するデータが不十分というケースが多々あります。
「S」(Stimulus)に関するデータが十分に揃うまで何もできないのか? というとそうでもありません。
例えば、「R」(Response)のデータである売上や受注などの結果系のデータに対し、異常検知をすることで、データ分析進めることができます。
今月の売上は通常通りだったのか? 今月の受注件数が落ちているけど問題ないのか? キャンペーンを実施した結果、通常より売上は伸びている(異常と言えるほどに)のか?
このような分析が可能となります。