データサイエンス(データ分析・活用)と聞くと、ものすごいミラクルを起こす何かであると、勘違いする人も少なくありません。
例えば……
- 今まで気づいていない大発見があるとか
- ワクワクすることが起こりそうとか
- 成長戦略の要になりうるとか
……です。
その期待が最近では……
- デジタルトランスフォーメーション
- Society 5.0(超スマート社会)
- デジタルマニュファクチャリング
- コネクテッド・インダストリーズ(Connected Industries)
……などの耳障りのいい夢のあるワードに現れています。
それは、天才軍師や兵法家がものすごいミラクルを何か起こすと思うぐらいにです。
データサイエンス(データ分析・活用)は魔法の杖ではありませんし、データサイエンティストは魔法使いではありません。
今回は、「データサイエンス(データ分析・活用)の効果・効能」というお話しをします。
Contents
天才軍師や兵法家はミラクルを起こすのか?
世界的な兵法書に「孫子」というものがあります。紀元前に中国のものです。
その「孫子」に、ミラクルを起こす方法が書かれているのでしょうか。
そして、孫子の兵法を応用することで、ミラクルを起こせるのでしょうか。
読んでみると分かりますが、ミラクルと言うよりも「手堅く地味」な感じで、ミラクルとは対極にある感じさえします。
情報をもとに、石橋をたたいて渡るかのようです。
分析官必読の世界三大古典
データはある種の情報です。
私はよく記録された情報と説明しています。情報と捉えると、その活用の歴史は紀元前までさかのぼれます。
「孫子」はデータサイエンス(データ分析・活用)を活用うる上で、非常に有効な知恵を授けてくれます。
私が新人のころ、分析官必読の世界三大古典として、以下の書籍を紹介されました。
- 孫武の「孫子」
- クラウゼビッツの「戦争論」
- 宮本武蔵の「五輪の書」
もちろん、データ分析の数理的な手法が記載されたものではありません。
なぜデータを活用すべきなのか、そしてどう活用すべきなのか、そのときの注意点は何か、といったものです。
孫子的データサイエンス(データ分析・活用)
先ほども述べましたが、データサイエンス(データ分析・活用)と聞くと、ものすごいミラクルを起こす何かであると、勘違いする人も少なくありません。
データサイエンス(データ分析・活用)の活用上有用な知恵を授けてくれる「孫子」をいくら読んでも、ミラクルを起こす方法は書かれていません。
孫子を現代のデータサイエンス(データ分析・活用)の観点で、私なりに考えてみると……
……となります。
意思決定
意思決定には、人がメインの意思決定(経験と勘、BI化、半自動化、AIサポートなど)と、コンピュータのみによる意思決定(完全自動化、AI化など)があるでしょう。
例えば、インターネット上の広告配信やECサイトの商品のレコメンドなどは、リアルタイムな運用はすでに人の手を離れ、コンピュータによる意思決定(自動化)だけのものも多いです。
もちろん、1年間の予算配分やどの広告媒体に出稿するか(例:Facebook広告にいくら、Googleにいくら、Yahooにいくら、など)などは、まだ人が意思決定しているとは思います。
データサイエンス(データ分析・活用)の得手不得手
データサイエンス(データ分析・活用)には得手不得手があります。
ビジネスの世界で、何もないところから新たなものを創造する「0→1」と、すでにあるものを拡大する「1→10」という考え方があると思います。
データサイエンス(データ分析・活用)が得意なのはどちらでしょうか。
データサイエンス(データ分析・活用)が得意なのは、「1→10」のほうです。すでに何かあるものを効率化したり、拡大化したりするのに非常に向いています。
データがないと何もできない
データがないと何もできないのがデータサイエンス(データ分析・活用)です。
データが溜まると効率化したり収益を拡大したり、何かしら役立つのがデータサイエンス(データ分析・活用)です。
もちろん、ビジネスの世界の話しです。
例えば、AmazonのECサイトのレコメンドの精度が高まれば高まるほど、収益が拡大されていきます。データが蓄積されればされるほど、レコメンドの精度は高まります。
データを蓄積することのできる既存事業ほど、データサイエンス(データ分析・活用)は向いています。もちろん新規事業でも、事業が開始され、データが発生し続けていれば問題ありません。
人とコンピュータのコラボレーション
要するに、データサイエンス(データ分析・活用)は「0→1」でなく「1→10」が得意で、データさえあれば効率化と収益拡大をスピーディーに実現してくる、強力な武器なのです。
しかし、「0→1」のそもそものアイデアや、そこにいたるまでの発想などは、人に大きく依存します。データサイエンス(データ分析・活用)でミラクルは起こりません。
人が起こしたミラクルを強力にサポートすることは可能です。
データサイエンス(データ分析・活用)で夢や希望を生むことはできませんが、夢と希望を効率的かつスピーディーに実現することができるのです。
今回のまとめ
今回は、「データサイエンス(データ分析・活用)の効果・効能」というお話しをしました。
データサイエンス(データ分析・活用)と聞くと、ものすごいミラクルを起こす何かであると、勘違いする人も少なくありません。
実際は真逆で、データという名の情報を使い、手堅くものごとを確実かつスピーディーに進め、効率化や収益拡大するのに向いています。
そのため、「0→1」といった無から有を生み出す段階よりも「1→10」といった有を拡大するのに向いています。
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)がデータを上手く活用しビジネスを拡大しているといっても、もともとのビジネスアイディアやそこにいたるまでの発想は、データよりも人に依存する部分の方が大きいと思います。
データサイエンス(データ分析・活用)でミラクルを起こすことは難しいですが、人が起こしたミラクルを強力にサポートすることは可能です。