データ文化のある会社もあれば、データ文化の無い会社もあります。
データ文化のある部署もあれば、データ文化の無い部署もあります。
少なくとも、データ文化が無い場所(会社や部署など)で、
- データ分析だの……
- ビッグデータ活用だの……
- データサイエンスだの……
と叫んだところで何も起こりません。
しかし昨今、
- デジタルトランスフォーメーションだの……
- Society5.0だの……
- Connected Industriesだの……
と叫ばれる中、データ文化が無いからできません、では済まない時代に突入しました。
もちろん、恩恵だけ受け取るという受け身でもいいですが、その中で積極的に生きる、という選択も素敵です。積極的に生きる決意をした企業では、多くの場合スマート○○という表現がされているようです。
とは言え、千里の道も一歩から、ということで、データ文化が無い場所(会社や部署など)で、どのようにしてデータ文化を根付かせる活動をすればいいのでしょうか?
今回は、「データ文化を醸成するための第一歩」というお話しをします。
データ分析への過剰な期待
データ分析の世界に、データマイニングというものがあります。
「データをマイニング(採掘)する」ということで、データから新たな知見を獲得しようというデータ分析です。
従来のデータ分析が統計学ベースの、仮説検証型のデータ分析だったのに対し、データマイニングは仮説発見型のデータ分析と言われています。
「さぁ、データを分析するぞ!」と言ったとき、データ文化の無い会社や部署などでは、いきなり仮設発見型のデータマイニングを夢見ることが少なくありません。
要するに、データ文化が無いがため、データ分析に対し過剰な期待をかけるのです。
無関心の壁
データ文化の無い会社や部署などでは、過剰な期待も起こりやすいですが、逆に無関心な状態も起こりやすいです。
世間がどんなに、ビッグデータだのデータサイエンスだのAIだのと騒いでいても、我関せずと無関心でいるのです。
データ分析を活用する現場で、この状態が起こると、データ分析・活用は実現しません。
面白いことに、「我が社はデジタルトランス・フォーメーションするぞ!」と叫んでいる経営の現場で、データ文化が無く無関心の場合もあります。
自分たちの経営の現場や、担当している事業部門が、昔ながらのKKD(経験と勘と度胸)や過度なFace To Face(例:全員参加型の定例会がやたらと多いなど)がベースなのに、その企業がデジタルトランス・フォーメーションなど実現できるわけありません。
このようなケースは厄介です。表向き関心がありそうで、実は無関心である、という状態だからです。
データ分析への過剰な期待の裏には、実はこの無関心の壁があるのだと思います。
多少なりとも関心があり調べれば、データマイニング的な仮説検証型のデータ分析が、非常に難解なことが分かるからです。要は、「いきなるそこを実現するぞ!」と言った感じで軽々しく口に出せません。もっと、地に足の着いた発言が発せられると思います。
発見の前に確認レベルのデータ分析を目指そう
「データ文化が無いと何もできないのか?」というとそういうわけでもありません。
できることはあります。
私は幸運にも、新卒でデータ分析の専門部署に配属されました。
諸先輩のやり口を見て、なるほどというやり方を今から紹介します。
データ文化の無い部署に対し、いきなり高度な何かをするのではなく、集計レベル(専門用語を使えば、記述統計・推測統計レベル)のデータ分析を実施します。
それも、データマイニング的な仮説発見型の分析ではなく、仮説検証型のデータ分析です。
多くの人が、もしかしてそうではないか、と思っていることを、データを使い検証していくのです。
何回訪問すれば受注できる?
例えば、法人営業の活動の中心は、訪問になるかと思います。
なぜならば、訪問すればするほど受注しやすくなるという言い伝えがあるからです。言い伝えと言うか、現場の営業の人は肌感覚として、このようなことは知っています。
しかし、多くの現場の営業パーソンは、何回訪問すればいいのかまでは分かっていません。
ヒアリングすると、2~3回で上手くいくときもあれ、10回以上訪問しても受注できないことがある、などあいまいな回答が返ってきます。
これをデータを使って検証するのです。
これが確認レベルのデータ分析です。
例えば、3ヶ月で8回訪問すると受注率が80%を超えるが、それ以上訪問しても受注率は大きく変化しない、といったことが分かります。
要するに何?
要するに、言い伝えとか、現場の肌感覚を、データを使って本当のところどうなのかを確認していくのです。
このとき、単に確認するだけでなく、ズバッとデータで言えることを追加するのがコツです。
先ほどの例ですと……
訪問すればするほど受注率があがる
……という現場の感覚をデータで検証するだけではダメということです。
例えば、
「データ分析で、訪問すればするほど受注率があがるということが分かりました!」
と言っても、
「そんなこと分かっている!!」
と言われています。
ここはズバッと、
「データ分析で、受注を獲得するには3ヶ月で8回訪問すればいいことが分かりました!」
と言えば、
「へぇ!! 面白い」
となり興味をもってもらえるようになるかと思います。
このレベルのデータ分析(確認レベルのデータ分析)を積み重ねることで、データ文化を醸成していくことができるかと思います。
これは、この人できるな!と私が思った諸先輩のやり口です。
このやり方ですべてが上手くいくとか限りませんが、試す価値はあるかと思います。
今回のまとめ
今回は、「データ文化を醸成するための第一歩」というお話しをしました。
データ文化が無い会社や部署などで、どのようにしてデータ文化を醸成する第一歩を進めだそうか、という悩みに対する解決の糸口というか、一つのやり方を紹介しました。
ワンフレーズで言うと、「先ずは、確認レベルのデータ分析をする」ということです。
確認レベルのデータ分析とは、集計レベルのデータ分析です。
何を確認するかと言えば、現場が何となく知っていることを、データを使って確認していきます。
そこでポイントになるのが、何となくの傾向などを確認するだけでなく、ズバッと数字でモノゴトを語ることです。
例であげたのは、法人営業の訪問回数と受注率のお話しでした。
この例の内容をまとめると……
- 現場の肌感覚:訪問すればするほど受注率があがる
- データで傾向を示す例:訪問すればするほど受注率があがる
- ズバッと数字でモノゴトを語る例:受注を獲得するには3ヶ月で8回訪問すればいい
……といった感じです。
要するに、確認と言っても、「データで傾向を示す」だけでなく、「データで傾向を示す」+「ズバッと数字でモノゴトを語る」ということです。
このやり方ですべてが上手くいくとか限りませんが、興味のある方は試してみてください。