未だに大企業神話は日本で根強いです。
AI(人工知能)/データサイエンスの世界でもそうです。
一方で、人によっては、古くからの大企業ほど上手くいっていない印象を持つ人もいることでしょう。
他社のIT化を支援しているITベンダー企業やSier企業(システムインテグレーター)などの社員であれば、次のように感じているかもしれません。
多大なる投資をし、
PoC(実証実験)という名のトライアルを実施したものの、
PoCで目立った成果がでない、
その先の実務活用に進まない、
進んだとしても、現場にIT化の不効率をもたらす
今回は、「PoC(実証実験)貧乏」というお話しをします。
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とりあえずPoCだ!
「とりあえずPoCだ!」という感じで、トライアルはするけど、その先に進まず収益上良い方向に進んでいない。
もしくは、PoC後に強引に先に進み、現場に混乱と面倒をもたらし、掛けたコストの割にプラスの便益が少ないどころか、マイナスの便益しかない。
要するに、コストに見合った何を全く得ていないということです。
大企業に多い印象です。
もちろん、このようなチャレンジは悪いことではありません。
IT化の不効率
昔から、社内システムを高度にIT化したと思ったら、現場業務が不効率(マイナスの便益)になることがあります。
私は、このような現象を「IT化の不効率」と呼んでいます。
例えば、社内申請システムを現場業務無視で作ったため、紙で申請していた時代は小1時間でできた申請が、なぜか半日かかってしまう。酷い場合だと1日かかる場合もあります。
ある企業で調べてみると、システムの使い方や入力方法が現場のビジネスパーソンが分からず、都度調べていることが分かりました。
システムのマニュアルを社内共有フォルダから探し読んだり、知っていそうな人に聞いたりしていたようです
チャットボットを作ろう!
そこで、入力支援AI(人工知能)という名の「チャットボットを作ろう!」となった企業がありました。
そして実際作りました。
チャットボットとは、文章や音声を通じて会話を自動的に行うプログラムのことです。身近過ぎて、意識しないで生活している人も多いかもしれません。
このチャットボットは優れもので、入力候補をレコメンドしてくれるのです。
しかし、現場では「うっとうしい」という理由で活用されないどころか、「入力の邪魔で、逆に時間がかかるから消してくれ」という要望が出るぐらいです。
IT系のシステムはデータ活用しやすいようには作られていない
そもそものシステムに問題があるのだから、そこを変えれば済む話です。
しかし、不効率化したITシステムの一部をAI化したらより酷くなった、という感じです。
そのシステムを前提に、データを使ってどうにかしようと考えても限界があります。
そもそも論でいうと、多くの古くからあるIT系のシステムは、データ活用しやすいようには作られていません。
そのため、システムからデータを取り出すのに一苦労し(社内調整やシステム上の制約など)、そのデータを分析できる状態にするのにさらに苦労し(データのコンディションチェックや整備など)、みたいな感じです。
データ活用しやすくする道具という魔力
最近は、データ活用を前提にした、もしくは、データ活用しやすくする道具も出てきています。
例えば……
- BI(ビジネスインテリジェンス)だの、
- MA(マーケティングオートメーション)だの、
- CRM/SFA(顧客管理システム/営業支援システム)だの、
- DMP(データマネジメントプラットフォーム)だの、
……などです。
しかし、このような道具は、データ活用した気分にさせるものの、実際は現場であまり活用できていないケースも多いようです。
現場は無視しても実務に影響がないからです。
その場合、道具の使用料が垂れ流し状態になり、ビジネス的には良くありません。
データ活用を推進し、利益を圧迫しているからです。
財務諸表を見れば、データ活用の成否はすぐにわかる
最近では、このような道具を導入後1,2年経過したぐらいに、財務諸表にポジティブなインパクトが無いことから、経営層が気づくケースも見受けられます。
データ活用が上手くいけば、財務諸表にポジティブなインパクトがあるからです。
データ活用で売上が上がれば、「売上高」が伸びますし、効率化やコストカットが上手くいけば「営業利益」や「事業貢献利益」などの利益が改善されます。
悲観的な話しが続きましたが、もちろん活用し成果を出している企業もあります。
筋のいいテーマを選んでいない
データを活用して、思うような成果を出していない企業には、ある共通点があります。
それは、IT投資が不十分であるとか、人財がいないとか、そういうものではありません。
非常に単純で、「筋のいいテーマを選んでいない」からです。
ただそれだけです。
不思議なくらい、難しいテーマに挑む企業が多いです。
ちょっと視線を脇を見れば、比較的容易に大きな成果を出すことのできるテーマが転がっているのにです。
最悪の場合、比較的容易なテーマなのに、データ活用の現場を無視し、テーマ自体を難しくしていることもあるようです。
比較的容易なテーマとは、現場で成果が出やすいテーマを指しています。
データが集まりやすく、もしくはすでにあり、現場の受け入れてくれて、実際に活用してくれて、そして何かしらのビジネス的な成果(売上アップ、コストダウン、利益率向上など)を得られるということです。
今回のまとめ
今回は、「PoC(実証実験)貧乏」というお話しをしました。
AI(人工知能)/データサイエンスの実務活用チャレンジの一つの形として、PoC(実証実験)というものがあります。
PoC(実証実験)貧乏という言葉があります。大企業ほど、この貧乏の罠にはまっている印象があります。
多大なる投資をし、
PoC(実証実験)という名のトライアルを実施したものの、
PoCで目立った成果がでない、
その先の実務活用に進まない、
進んだとしても、現場にIT化の不効率をもたらす
データを活用して、思うような成果を出していない企業には、ある共通点があります。
それは、「筋のいいテーマを選んでいない」からです。