ビッグデータであれリトルデータであれ、ビジネスで成果をあげ続けるためには、継続した運用が必要になります。
運用管理の手法として日本で浸透しているのが、PDCA(Plan-Do-Check-Act、計画-実行- 評価-改善)サイクルです。一度はどこかで聞いたことがあることでしょう。
このPDCAサイクルは非常に優れた運用サイクルです。根気よくスピーディーに回し続ければ、何かしらのビジネス成果を得ることは可能です。
とっても便利なPDCAサイクル
PDCA(Plan-Do-Check-Act、計画-実行- 評価-改善)サイクルについて、簡単に説明します。
- P(Plan、計画)で、実行計画(誰が、何を、いつまでにするのか)を作ります。このとき、管理する指標とその目標値(いつまでに、どの程度達成すべきか)なども定めます。
- D(Do、実行)で、計画に沿って動きます。
- C(Check、評価)で、上手くいっているのかを評価し、問題があればその要因を分析します。
- A(Act、改善)は、C(Check、評価)で分かった要因を改善します。
いかがでしょうか。どのような企業でも、意識しているかどうかは別として、このようなPDCAサイクルを回しています。
PDCAサイクルのいくつかの例
どのような企業でも、事業計画を作り決算をします。例えば、このような事業計画や決算を、PDCAサイクルで考えると次のようになります。
- 事業計画がP(Plan、計画)
- 日々の事業活動がD(Do、実行)
- 決算がC(Check、評価)
- 経営改善や変革などがA(Act、改善)
法人営業を支援するマーケティングの部署では、新規顧客獲得のために展示会などのイベントに出展したりします。例えば、このようなイベント出展を、PDCAサイクルで考えると次のようになります。
- イベントへの出展計画がP(Plan、計画)
- イベントの出展活動やその後のフォロー(メールや電話、訪問など)などがD(Do、実行)
- 出展活動や計画そのものを評価するのがC(Check、評価)
- イベントの出展後に反省すべき点を改善するのがA(Act、改善)
ビジネスでデータ活用をするとき、未来の見通しを得るために、売上や受注などの予測モデルを開発し使うことがあります。例えば、このような予測モデルの開発も、PDCAサイクルで考えると次のようになります。
- 予測モデルの開発計画がP(Plan、計画)
- データ整備やモデル実装などがD(Do、実行)
- 実装したモデルの精度評価などがC(Check、評価)
- よりモデルの精度をより高めるための改善がA(Act、改善)
このPDCAサイクルは、様々なビジネスの現場で活用されています。
しかし、このサイクルが上手く回らないことがあるのです。
PDCAサイクルが上手く回らない、よくある原因
私の印象では、じっくり突き詰めていく品質管理や研究開発などでは比較的上手くいっています。しかし、外部環境の変化の激しい営業やマーケティングなどの部署では、あまり上手くいっていない気がします。
特に、データ活用の現場に近づけば近づくほど、PDCAサイクルが上手く機能していない。上手く機能しないとは、ビジネス成果が、想定よりも少ないということです。
PDCAサイクルを回しても、あまりビジネス成果が得られないのであれば、誰もPDCAサイクルを回さなくなるかもしれません。もしくは、回しても形骸化だけでしょう。
PDCAサイクルが上手く機能しない原因には、いくつかあります。例えば以下の3つです。
- P→D(計画→実行)が上手く流れない「計画倒れ」問題
- D→C(実行→評価)が上手く流れない「反省しない」問題
- C→A(評価→改善)が上手く流れない「誰が改善するのか分からない」問題
仮に、P→D→C→A(計画→実行→評価→改善)が上手く流れたとしても、PDCAサイクルが上手く機能しないこともあります。
PDCAサイクルが現場の足かせになるとき
PDCAサイクルが機能しない大きな原因の一つとして、「スピード」の問題があります。P→D→C→A(計画→実行→評価→改善)と上手く流れたとしても、この問題は起こり得るのです。
営業やマーケティングなどのデータ活用の現場で、このスピードの問題が起こりやすいです。
PDCAサイクルのスピードが遅く、環境変化に追随できないのです。営業やマーケティングなどを取り巻く環境変化が激しいからです。
例えば、受注できそうだと前日まで思っていた顧客から、次の日の午前中に断りの連絡を突然受け失注する。先月までトップシェアを誇っていた製品が、次の月に発売された競合品に市場トップの座を奪われる。
これらは、実際に私が目の当たりにしたことです。
ビジネスを取り巻く環境は、刻一刻と変化します。その変化の流れに乗るには、スピード感が必要になります。営業やマーケティングなどの現場に近いほどスピードが求められ、このスピードにPDCAサイクルが追い付く必要があります。
では、どのくらいのスピードがPDCAサイクルに求められるのでしょうか。
求められるPDCAサイクルのスピード
私の経験から言います。
営業やマーケティングなどの環境の変化の激しい部署であれば、遅くとも1週間単位でPDCAサイクルを回し続けるのがよいでしょう。
例えば、1か月単位でPDCAサイクルを回すと機能しなくなることでしょう。
企業レベルであれば1か月単位や1年単位でもよいかもしれません。営業やマーケティングなどのデータ活用の現場では、1週間以内でないと上手くいかないのです。
なぜならば、1か月単位だとPDCAサイクルのC(Check、評価)が機能しなくなるからです。
C(Check、評価)は単に数字を見るだけでなく、なぜそのような数字になったのかを考える必要があります。考えるためには、そのときの状況の記憶が必要になります。1週間前の記憶はあっても、3、4週間前の記憶となると非常にあいまいになる人が多いです。そのため、1か月分のデータと直前1週間分の記憶でC(Check、評価)を実施することになり、データの解釈を誤る危険性が高くなるのです。
つまり、現場でPDCAサイクルを回すなら、最低でも1週間単位でないと上手くいかないことでしょう。
しかし、営業やマーケティングなどの現場では、1週間単位でも遅いかもしれません。1人や数人のグループで回すのであれば、理想は1日単位がよいです。1日単位のPDCAサイクルを回せるようになると、データ活用の現場では機能し始め、ビジネス成果が生まれます。
要するに、営業やマーケティングなどでデータ活用をするなら、1日単位でPDCAサイクルを回せばよいのです。
超高速PDCAサイクルです。1週間単位でPDCAサイクルを継続的に回すだけでも大変なのに、それを1日単位で回すのです。
では、どうすればよいのでしょうか。次回、お話しいたします。