モニタリングする指標の多くは、時系列データといわれるものです。
時系列データとは、一定間隔(例:1週間、1日、1時間)ごとに観察されるデータのことです。ビジネスの多くの指標は、時系列データでしょう。
例えば、一般消費者を相手にする小売店であれば「日販」(1日の売上高)や「購入者数」(レシート数)は、時系列データです。法人営業の部署であれば1週間の「問い合わせ件数」や「受注件数」なども時系列データです。
要するに、ビジネスデータ分析は、時系列のデータ分析なのです。
指標は、あまり変化しないからこそ見るべき
日々モニタリングしている指標の値は、当然ながら日々変化します。しかし、多少の変化はあっても、大きく変化することは少ないことでしょう。
例えば、ある小売店の「日販」の平均が平日50万円で休日120万円であれば、平日は40万円~60万円ぐらいの範囲に、休日は110万円~130万円ぐらいの範囲に収まることでしょう。
例えば、ある法人営業の営業課で、取り扱っている商材の、ある時期の1週間の「問い合わせ件数」の平均が25件であれば、その時期はどの週も概ね15件~35件ぐらいの範囲に収まることでしょう。
このように指標の値は、ある一定の範囲内に収まります。しかし、時々思いがけない変化をすることがあるのです。
例えば、平日に平均50万円ぐらいで推移していた「日販」が、ある日を境にじわじわと上昇し、気づけば平日の「日販」の平均が100万円ぐらいの水準になっていたりする。
例えば、取り扱っている商材の1週間の「問い合わせ件数」が25件ぐらいで推移していたのに、ある週だけ急に跳ね上がり「問い合わせ件数」が100件になることもあるかもしれない。
このようなことに気づくことは重要なことでしょう。日々あまり変化しない指標を毎日のように見ていればこそ、発見できるのです。
2つの異常値
この思いがけない指標の変化を検知するのが、「異常検知」です。
異常値にも色々あります。営業やマーケティングであれば、検知したい異常は2種類あります。「外れ値」と「変化点」です。
「外れ値」とは、文字通り「通常の指標の値とかけ離れた値に、一時的になること」です。
先ほど例にあげた、取り扱っている商材の1週間の「問い合わせ件数」が25件ぐらいで推移していたのに、ある週だけ急に跳ね上がり「問い合わせ件数」が100件になる、という現象です。
この外れ値がなぜ起こったのか、何かやばいことが起こる前触れなのか、思いがけないチャンスなのか、あらかじめ対応可能なことなのか、無視しても問題ないのか、色々と気になることでしょう。
「変化点」とは、レベルシフト(水準変化)の「潮目」のことです。レベルシフト(水準変化)とは、全体の水準(レベル)が変化(シフト)することです。
例えば、平日の「日販」の平均が50万円(50万円レベル)から平均100万円(100万円レベル)になることを意味します。
このような変化点を検知することも、ビジネス上重要でしょう。
2つの「潮目」(変化点)
レベルシフト(水準変化)の「潮目」(変化点)は2つあります。
先ほどの例の場合であれば、平日の「日販」の平均が50万円(50万円レベル)の「終焉時期」と、100万円レベルになる「開始時期」です。
上方向のレベルシフトが起これば、早め早めにリソース(例:ヒト、モノ、カネ)を確保し、機会損失を起こさないように対策を打つことになるでしょう。
逆に、下方向のレベルシフトが起これば、早め早めにその要因を掴み対策を打ち、その変化に何かしら対策を打つ必要があるでしょう。
そのレベルシフトの「潮目」(変化点)を検知することで、早め早めの対策が打てるのです。
異常検知の2ステップ
具体的には、以下の2ステップで「異常検知」を実施します。
- ステップ1:時系列モデルの構築
- ステップ2:外れ値スコアの算出
ステップ1の「時系列モデルの構築」とは、過去データで時系列モデルを構築し、「確率密度」を求めることです。ステップ2の「外れ値スコアの算出」とは、求めた確率密度から、「外れ値スコア」を計算することです。
一見難しそうに思えるかもしれませんが、実はExcelだけで簡単にできます。
Excelだけで実施する異常検知の方法は、別の機会に「Excel分析講座」の方で取り上げます。
つまり、ビジネスデータの多くは時系列データで、もちろん売上や受注件数、問い合わせ件数などの営業関連データも時系列データです。
このような、時系列データは通常は大きな変化をすることなく推移しますが、ある日突然おかしな動きをすることがあります。そのようなおかしな動きを検知するのが、異常検知です。
異常検知したら、次にその要因は何かを調べることになります。要因分析と言われるデータ分析です。