データ活用と相性がいいのは、既存の何かをより良くする(楽にする)ことです。
既にあるビジネス(事業)に対し、新規顧客の獲得・既存顧客の離反阻止・既存顧客のLTV拡大・業務効率化・生産性向上・コストダウンなどなど。
データを駆使しビジネス(事業)を作り上げることはできないだろうか?
リーンアナリティクス(Lean Analytics)というデータ分析があります。このリーンアナリティクスは、リーンスタートアップの中で使います。
リーンスタートアップはこれからビジネス(事業)を作るときにも重宝しますし、既存事業の見直しをするときにも重宝するメソドロジーです。
今回は、「リーンスタートアップとは?」というお話しをします。
Contents
リーンスタートアップ
リーンスタートアップとは、米国の有名な起業家であるエリック・リース氏が提唱したと言われている、最小限の努力で商品やサービスなどをスピーディーに作りあげるマネジメント手法です。
リーン生産方式(lean production)の考え方をベースにしたもので、商品やサービスなどを開発する際に発生する、作り手や提供側の思い込みによる「ムダ」を省くための手法です。
ちなみに、リーン(lean)とは「贅肉がとれた」という意味で、リーン生産方式として有名なのがトヨタ自動車のトヨタ生産システムやGEのシックスシグマです。
生産現場では、徹底したプロセス管理のもと、日々発生するデータを使いサイクルタイム短縮や歩留まり向上などの、コストダウン活動を実施していることでしょう。その考え方を、商品やサービスを開発しローンチ(上市)するときに活用しましょう、という感じです。
ですので「スタートアップ」という名称が入っていますが、大企業でも老舗企業でも、この考え方は活用できます。
学習サイクル
先ほど、リーンスタートアップとは最小限の努力で商品やサービスなどをスピーディーに作りあげるマネジメント手法である、と述べました。
では、具体的にどのように進めるのでしょうか?
構築(Build)⇒計測(Measure)⇒学習(Learn)の学習サイクルを迅速に回します。いかに短期間に、無駄なく多くのことを学び、製品に反映できるのかが勝負になります。
簡単に説明します。
構築(Build)
何かしらのビジネスアイデアがあることを前提に話しが始まります。
アイデアや仮説などをもとに商品やサービスなどを企画し、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる最低限実用に足る製品(Product)を作ります。
これが構築(Build)です。
計測(Measure)
このMVPを顧客に試してもらい、どのような反応が返ってくるのかを見ます。
これが計測(Measure)です。
計測(Measure)するとデータが発生(計測結果)します。
学習(Learn)
データ(計測結果)をもとに、MVPを改良します。それが学習(Learn)です。
学習(Learn)のときデータ分析(リーンアナリティクス)をすることになります。データ分析(リーンアナリティクス)の結果をもとに、顧客価値の高い製品へと改良していきます。
要するに、アイデアや仮説などをもとにMVPを作り、それを顧客に試してもらいその反応を計測し、その計測し得られたデータをもとに改良を繰り返す、ということです。
そう考えると、何やらMVPが非常に重要になってきそうですね。
MVP(Minimum Viable Product)
MVP(Minimum Viable Product)は、仮説検証のための製品です。
どのような仮説を検証したいのかで、どのようなMVPを作るのかが変わってきます。
MVPを作り検証すべきことは、主に以下の3つです。
- 顧客の課題(お困りごと)の有無
- その解決策(ソリューション)の顧客価値
- 解決策(ソリューション)の市場性
顧客の課題(お困りごと)の有無
先ずは、「顧客」とその顧客が抱えている「課題」(お困りごと)が存在するのかを検証する必要があります。
要は、誰の何の「お困りごと」を解決するのか? ということです。
解決策(ソリューション)の顧客価値
次に検証すべきは、顧客の「お困りごと」の解決策(ソリューション)として提供する製品の顧客価値の検証を行います。
コスト(金銭的・時間的)を払っても良いと思われるほどのアウトカム(顧客の「お困りごと」が解消もしくは緩和されている状態) を、提供できているのか? ということです。
解決策(ソリューション)の市場性
そして、市場性がどれほどあるのか? を検証することになります。
今説明した3つの検証では、データを使って行っていきます。
- 顧客の課題(お困りごと)の有無
- その解決策(ソリューション)の顧客価値
- 解決策(ソリューション)の市場性
要は、リーンスタートアップは、MVP(Minimum Viable Product)による仮説検証をデータを使って繰り返す、ということになります。
データを使うからには分析をする必要があります。それがリーンアナリティクスです。
リーンアナリティクスとMVP
構築(Build)⇒計測(Measure)⇒学習(Learn)の学習サイクルの中の「計測(Measure)・学習(Learn)」の部分がリーンアナリティクスの対象になります。
リーンアナリティクスをするとき、データをいきなりポンと渡されても困ります。あらかじめ分析設計をしておく必要があります。
データ分析を設計するときの基本は「逆算」です。リーンアナリティクスもデータ分析ですので、やっぱり「逆算」です。
- 学習サイクル:構築(Build)⇒計測(Measure)⇒学習(Learn)
- リーンアナリティクスの設計:学習(Learn)⇒計測(Measure)⇒構築(Build)
ただ、通常のデータ分析と異なるのは、データの発生源を必ず設計することにあります。要は、MVPの構築まで視野に入ります。
簡単に説明します。
- 先ず、検証したい仮説(学び)を考えます
- 次に、どのようなデータ分析結果があればいいのかを考えます
- その次に、その分析結果を出すためのデータ分析方法を考えます
- その次に、その分析をするときに必要なデータは何かを考えます
- その次に、必要なデータを収集するための計測方法を考えます
- その次に、計測を可能にするMVPを考えます
- その次に、MVPをどう構築するのかを考えます
- そして最後に、MVPを構築します
そもそも、MVPとは何なのか?
MVP(Minimum Viable Product)とは、最低限実用に足る製品(Product)です。
「最低限」と言うワードが入っていることから分かる通り、完成品である必要はありません。
プロトタイプ系MVP
一番最初に思いつくのが、ベータ版と呼ばれる「プロトタイプ」(デモ版など含む)ではないでしょうか。
想定顧客にデモ版の製品を見せたり使ってもらえば、有意義なフィードバックをもらえそうです。
昔から試作品を作り、想定顧客に使用テストしてもらうという調査は実施されてきましたので、分かりやすいかと思います。
ただ、試作品やデモ版と言えども、それなりの製品にはなっているので、そう簡単に作れるものでもありません。
他にもMVPはあります。
なんちゃって裏側人力系MVP
ベンチャー系の企業でたまに「なんちゃって裏側人力」系のMVPが見かけられます。
専用のサイトやアプリのGUI側だけ作り、裏は人力というものです。
何のことか分からない方も多いと思いますので、有名な事例だけ紹介します。
ザッポス(https://www.zappos.com/)という米国の有名な靴のECサイトがあります。サービス開始当初は、サイトに注文が入った後の処理は人力(注文された商品を買いに行き発送)を行っていたそうです。
そのあたりのお話しが、創業者が執筆した書籍に書かれています。
顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか
https://www.amazon.co.jp/dp/447801373X
最近では、AI系のベンチャーなどでたまにあります。
ペーパープロトタイプ系MVP
ベンチャーやIT系の企業に多いのが、「ペーパープロトタイプ」と呼ばれるMVPです。
ペーパープロトタイプは、文字通り絵にかいた餅です。イメージとしては、サービス企画書を提案書に近いですが、企画書ほどガッツリしたものではなく、A4 数枚程度(可能であれば、両面でA4 1枚)にコンパクトにまとめたものがいいでしょう。
要は、製品はまだないけど、この絵に描いた餅を想定顧客に見てもらい反応を計測するといったものです。
想定顧客に見てもらいに行くのではなく、例えば、サイト上にLP(ランディングページ)を作って反応を見るケースや、デモ動画を作って反応を見るケースもあります。
他にも、リーサーチ会社を使って、製品コンセプト系のアンケート調査をするケースもあります。
クラウドファンディング系MVP
最近では、「クラウドファンディング」を使ったMVPも増えているように感じます。
どういったものかと言うと、クラウドファンディングで製品アイデアを掲載し、支援者と呼ばれる見込み顧客から開発資金を集める、といった感じのものです。
ここで言いたいのは、ベータ版と呼ばれるプロトタイプ(デモ版など含む)を作るだけがMVPではない、ということです。
次回
今回は、「リーンスタートアップとは?」というお話しをしました。
キーになるのが……
- 学習サイクル
- MVP
- リーンアナリティクス
そもそも、学習サイクルの最初の「構築(Build)」でMVPを作るときに、その元になるアイデアや仮説をどのように整理しまとめればいいのか? という疑問があると思います。
そのためのツールが、リーンキャンパスです。ビジネスモデルを描くキャンパスです。既存の事業をリーンキャンパスで整理するのもいいでしょう。
ビジネスモデルを描いたリーンキャンパスは、MVPを構築しながらリーンアナリティクスでブラッシュアップし、より高精度なビジネスモデルに進化させていきます。
次回は、「リーンキャンパスとは?」について説明します。