データを集めたら、次にデータを分析しなければなりません。
集めたデータと分析の関係は、食材と料理の関係に似ています。良い食材であっても料理人の腕に問題があると台無しになることがあります。不十分な食材でも調理しだいで美味しくなることもあります。
データの分析の考え方と最も基本的な手法について、全15回にわたってお話しいたします。
- その1 定量分析と定性分析
- その2 分析の基本は比較
- その3 古くて新しいQC7つ道具 ※5回に分けてお話し
- その4 古くて新しい新QC7つ道具 ※5回に分けてお話し
- その4-1 新QC7つ道具の概要
- その4-2 親和図法(KJ法)とDEMATEL ⇒ 今回
- その4-3 系統図法(ロジックツリー)
- その4-4 一対比較法とAHP
- その4-5 マトリックスデータ解析法と多変量解析
- その5 要因分析と統計的因果推論 ※3回に分けてお話し
前回は、その4の「古くて新しい新QC7つ道具」のその4-1の「新QC7つ道具の概要」についてお話ししました。
今回は、その4の「古くて新しい新QC7つ道具」のその4-2の「親和図法(KJ法)とDEMATEL」です。
Contents
親和図法(KJ法)
親和図法(KJ法)の概要
親和図法は、KJ法とも言われ、よくブレインストーミングで利用します。
ブレインストーミングとは、日本語では集団発想法とも呼ばれ、集団で発想を誘発し合い、たくさんのアイデアを出す会議方式の1つです。
そこで出されたたくさんのアイデアをまとめるのがKJ法になります。
親和図法(KJ法)のブレスト4原則
ブレインストーミングの際に、次の4原則を守ることで、たくさんのアイデアが抽出されます。
- 結論厳禁
- 自由奔放
- 質より量
- 結合改善
結論厳禁:
アイデアの批判、実現性、良し悪しなどの評価をし、アイデアに対し何かしら結論付けをすることで、他のアイデアを出にくくしてはならない
自由奔放:
誰もが思いつくようなアイデアでも、奇妙なアイデアでも、くだらないと一蹴されそうなアイデアでも、他人を気にせず思いついたことをどんどん言う
質より量:
すばらしいアイデアを出そうと思わず、とにかくアイデアの量を増やすことを重視する
結合改善:
他人のアイデアに便乗しちょっとずらしたアイデアでも、他人のアイデアをくっつけて新しいアイデアを作っても構わない
親和図法(KJ法)の進め方
親和図法(KJ法)そのもののやり方は非常に簡単で、「発散→集約→要約」という流れになります。
- 「発散」が今説明したアイデアをたくさん出すブレインストーミングに該当します
- 「集約」で似たようなアイデアをグループ分けします
- 「要約」でそのグループに対し名前を付けします。
この要約されたものが親和図法(KJ法)の成果物となります。
親和図法(KJ法)の利用場面
親和図法(KJ法)の利用場面は、意外と多いことでしょう。
例えば……
- データ分析・活用のテーマのもととなる問題(お困りごと)を、洗い出しまとめたり
- モニタリングや異常検知などの結果から、何が起こっているか思いつく限りを洗い出し、現状を整理したり
- 要因分析などの結果から、どのような対策を打つのが良さそうか、アイデアを抽出しまとめたり
- 異常検知や要因分析などのデータ分析の結果から、今後どういうことになりそうかを考えるのに利用したり
- 将来予測やレコメンドなどの結果から、今度どうすべきかを解決策をまとめたり
- その解決策を実施することで、どうなりそうなのかを考えまとめたり
……するのに利用します。
やり方は非常に簡単ですが、非常に頭と時間を使うため、まとまった時間で集中してやることをお薦めします。
DEMATEL法
DEMATEL法の概要
DEMATEL(DEcision MAking Trial and Evaluation Laboratory)法 とは、複雑に絡み合った問題の構造を見極めるために、要因同士のつながりを「見える化」し整理する手法です。
1970年代にスイスのジュネーブにあるバテル研究所で開発されたものです。
親和図法などで洗い出されたアイデアやファクト(事実)などを整理するときに主に使います。
DEMATEL法の進め方
ここで説明するのはDEMATEL法の簡易版になります。
次の3段階で進めます。
- 段階1 評価
- 段階2 計算
- 段階3 マップ化
段階1の「評価」では、2つの要因間に「始点と終点」の関係があるのかをどうかを評価します。
段階2の「計算」では、要因のそれぞれについて、始点としての影響度(Dスコア)と終点としての影響度(Rスコア)を算出し、「R+Dスコア」と「R-Dスコア」を計算します。
段階3の「マップ化」では、「R+Dスコア」×「R-Dスコア」のマップを作成します。これをデマテルマップと呼びます。
では、各段階について簡単に説明していきます。
段階1 評価
各要因間(今回の場合は「ファクト」間)に時間的な前後関係や因果関係といった直接的な関係性(始点と終点)が「あるのか? ないのか?」を評価します。始点をD、終点をRと表現します。
例えば、要因A(ファクトA)の後に要因B(ファクトB)が生じるなら、要因A(ファクトA)が始点(D)で要因B(ファクトB)が終点(R)になります。
段階2 計算
各要因(ファクト)の「Dスコア」と「Rスコア」を計算します。
「Dスコア」と「Rスコア」から、段階3のマップの座標である「R+Dスコア」と「R-Dスコア」を求めるためです。
「R+Dスコア」はその要因(ファクト)の「重要度」を表します。その要因が他の要因(ファクト)とつながっている(例:ハブになっている)ほど「R+Dスコア」は大きくなります。
一方、「R-Dスコア」はその要因(ファクト)がどちらかというと「原因」になるのか、それとも「結果」になるかを表します。「R-Dスコア」が大きければその要因(ファクト)は「結果」の性格が強く、小さければ「原因」の性格が強いと解釈します。
段階3 マップ
「R+Dスコア」(重要度)をタテ軸、「R-Dスコア」をヨコ軸にしたマップを作ります。
マップの左側に来るのが原因系の要因(ファクト)で、右側に来るのが結果系の要因(ファクト)です。このマップがデマテルマップです。
このとき、あまりタテ軸の「R+Dスコア」(重要度)を気にしなくても問題ありません。デマテルマップが見やすくなるぐらいの感覚で問題ありません。
他のファクト(事実)と関連していると「R+Dスコア」(重要度)が大きくなりますが、ファクト(事実)の根深さを表現したものではないからです。
また、デマテルマップ上のファクト(事実)間に矢印などの線を引いても引かなくても問題ありません
あくまでも、どのファクト(事実)が原因寄りで、どのファクト(事実)が結果寄りなのかを把握できれば十分です。
次回
今回は、その4の「古くて新しい新QC7つ道具」のその4-2の「系統図法(ロジックツリー)」のお話しをしました。
- その1 定量分析と定性分析
- その2 分析の基本は比較
- その3 古くて新しいQC7つ道具 ※5回に分けてお話し
- その4 古くて新しい新QC7つ道具 ※5回に分けてお話し
- その4-1 新QC7つ道具の概要
- その4-2 親和図法(KJ法)とDEMATEL
- その4-3 系統図法(ロジックツリー) ⇒ 次回
- その4-4 一対比較法とAHP
- その4-5 マトリックスデータ解析法と多変量解析
- その5 要因分析と統計的因果推論 ※3回に分けてお話し
次回は、その4-3の「系統図法(ロジックツリー)」のお話しをします。
もっと知りたい方はこちら
14のフレームワークで考える かんき出版 (2014/9/18) |