どの企業にでもあるのが、過去の取引データです。いつどの企業からいくら売り上げたのか、を記録したデータです。
このようなデータを分析しただけでも、結構面白い分析結果が出てきます。今後の営業活動に向けた示唆を得ることもできます。
その中で、お決まりの分析結果と示唆がありますので、ご紹介します。
パレートの法則
よくやるデータ分析に、ABC分析というものがあります。
例えば売上であれば、売上の大きい順に顧客を並べます。売上高の大きい顧客をAランク、売上高がまぁまぁ高い顧客をBランク、売上高の小さな顧客をCランクに分けます。このときパレートの法則を読み取ることができます。
パレートの法則とは、売上の例ですと、売上上位20%の顧客(Aランク)が売上全体の80%を占めるという法則です。現実には、業種や企業によって異なります。ある業種では売上上位10%の顧客(Aランク)が売上全体の70%を占めたり、あり企業では売上上位5%の顧客(Aランク)が売上全体の90%を占めたりします。
共通しているのは、売上の上位の顧客(Aランク)で売上全体の大部分を占める、ということです。
このようなパレートの法則は、売上だけでなく利益でも同じです。しかし、面白いことが分かります。、売上の上位の顧客(Aランク)と、利益の上位の顧客(Aランク)が異なるのです。
売上が大きいとは?
売上が大きいとは、何を意味するのでしょうか?
システム開発やコンサルティングなどの、役務を提供する「サービス」であれば、従業員がたくさん働きお金を顧客から頂くということになります。モノを売るわけでないからです。
モノである「商品」を売るのであれば、作ったものや仕入れたものを売るわけですから、粗利(売上-原価、もしくは、売上-仕入コスト)からマーケティングや営業活動などの売るためにコストを引いたものが利益になります。
「サービス」と「商品」に共通しているのは、マーケティングや営業活動などの売るためにコストです。マーケティングや営業活動などの売るためにコストを適切に管理しないと、赤字になってしまいます。通常は、赤字にならない程度に、マーケティングや営業活動などの売るためにコストを掛けることでしょう。
特に、役務なのどの「サービス」の場合、「売上が大きい≒従業員(営業含む)がたくさん働く」という構図になることでしょう。モノなどの「商品」であっても、「売上が大きい≒営業パーソンがたくさん働く」という構図になります。
売上が大きいのに、赤字すれすれという悲劇
横軸に「売上高」、縦軸に「利益率」の散布図を描くと、衝撃的なことが分かります。
売上高が高いのに、ほとんど利益のでていない(利益率が低い)ような、お得意様がプロットされます。
売上高が大きいとは、会社の従業員の誰かが頑張っているはずです。役務なのどの「サービス」の場合であれば、営業パーソンだけでなく役務提供者であるエンジニアなどが、たくさん働きます。
売上高が大きいのに利益率が低いとは、たくさん働いているのに、企業にお金が残らない。赤字であれば目も当てられません。収益という面から見ると、企業貢献がマイナスということになります。
社員個人としては、スキルアップとか経験を積むというプラスの側面もありますが、会社全体で考えると好ましくありません。
営業が「行きたがる顧客」
しかし、営業パーソンは、利益率に関係なく「売上高の高いお得意様」に行きたがります。たくさん受注できたり、受注規模が大きかったりするからです。
利益という側面を考えれば、たくさん受注できたり、受注規模が大きい顧客であっても、契約内容を見直したり取引を停止するぐらいの措置が必要となるでしょう。
では、営業が「行くべき顧客」は誰でしょうか?
当然ながら、売上が大きく利益率も高い顧客であれば、絶対に逃さないようにすべきです。売上が大きいという理由で、営業が「行きたがる顧客」なので問題ありません。
注目すべきは、売上が小さくのに利益率が高い顧客です。
営業が「行くべき顧客」
営業が「行くべき顧客」とは、売上が小さくのに利益率が高い顧客です。
そのような顧客の属性(業種や業態、規模など)を調べます。幾つかのグループ(業種や業態、規模など)に分かれることでしょう。例えば、大手建設業グループ、地方の中堅小売チェーン、東京周辺のAI(人工知能)ベンチャーなど。各グループが、一つの市場です。
各グループ(市場)ごとに、どのくらい潜在的な顧客がいるのか。顧客になったらどの程度のLTV(顧客生涯価値≒取引期間中の売上高の総計)になりそうなのか。このような分析をします。具体的な分析方法は、それほど難しくはありませんが、ここでは割愛します。
要するに、過去の取引データを使って、横軸に「売上高」、縦軸に「利益率」の散布図を描くという、誰でもできるようなデータ分析だけで、このように面白い結果が分かり、どのターゲットを狙うべきかが見えてくるのです。