一時期、社内にデータ分析の専門部署を新設もしくは拡張する企業のニュースが、流れていました。
数年間で、データサイエンティストを100名体制にするだの、ビッグデータ技術者を倍増するだの、AI(人工知能)・機械学習エンジニアを積極的に育て新たな強みにするだの。そして実際は、その計画の十分の一にでもなれば御の字。
最悪の場合、データ分析の専門部署は解体し跡形もなくなるか、各部署に分析スキルを持つ人財が散っていく。そのような中、比較的上手くデータ分析の専門部署を維持発展させる企業や機関もあります。
では、比較的上手くデータ分析の専門部署を維持発展させる企業や機関に共通していることは、何でしょうか。ヒントがそこにあるに違いありません。
実は、答えは簡単
比較的上手くデータ分析の専門部署を維持発展させる企業や機関には、共通していることがあります。それは、データ分析の専門部署が混合チームになっていることです。
「現場を熟知している人財」と「データ分析を熟知している人財」の混合チームです。
「現場を熟知している人財」は、現場を知識として知っているだけでなく、自分の経験を通して知っています。しかし、データ分析そのものはなんとなく知っていても、深く知っている必要はありません。
一方で、「データ分析を熟知している人財」は、データ分析を知識として知っているだけでなく、データ活用しビジネスが躍動した経験をしています。しかし、どうしても頭でっかちになりがちです。知識としてなんとなく現場を知っていることがあっても、経験していない部分が多いため、実はよく分かっていません。
データ分析の手法偏重者
「データ分析の手法偏重者」は、「データ分析を熟知している人財」ではありません。
では、どのような人なのでしょうか?
「データ分析の手法偏重者」とは、一つ一つのデータ分析の手法やアルゴリズムなどを知っていても、実務で活用し成果をだしたことのない人です。
「データ分析の手法偏重者」は、一見するとデータ分析に詳しそうに見えるのですが、データ分析をいかに実務で活用するのかが分かっていません。「データ分析の手法偏重者」の特徴は分かりやすく、非常に勉強熱心で、データ分析や数理統計学、機械学習などの書籍を読みまくり、手で動かし勉強しています。
最初は誰もが「データ分析の手法偏重者」
データ分析の世界に踏み込んだばかりの多くの人は、「データ分析の手法偏重者」です。
20代の頃の私もそうでした。
よくよく考えてみると、それは当然です。データ分析の世界に踏み込んだばかりなので、データ活用でビジネスが躍動した経験などありません。
なので、「データ分析の手法偏重者」になることが悪いわけではありません。
「データ分析の手法偏重者」を、「データ分析を熟知している人財」と勘違いするのがよくない。周囲もそうだし、分析者自身もそうです。
ではどうすれば、「データ分析の手法偏重者」から「データ分析を熟知している人財」へと進化できるのでしょうか。
ビジネスの現場に突入せよ!
「データ分析の手法偏重者」が、「データ分析を熟知している人財」になるためには、ビジネスの現場で実践あるのみです。
しかし、最近の「データ分析の手法偏重者」の多くが高学歴者で、修士号だの博士号だのを取得した大学院卒業者。知識や学問として、分析手法やアルゴリズムを知ってる。
しかし、知識や学問として分析手法やアルゴリズムを知っていることと、実務活用できることは、当然ですが全く異なります。ちょっとした壁があります。その壁は、英語を中学校から学んでいるのに、英語をペラペラ話せない大卒・大学院卒と同じです。理論と実践には大きな壁があります。もちろん、英語同様に、データ分析の世界も勉強していることは無駄にはなりません。
「勉強」は地頭の善し悪しが大きな要因になるかもしれませんが、「実践」は経験(失敗の場数)が大きな要因になります。
正直、「データ分析を熟知している人財」に高い学歴は必要ないと思います。高い学歴は、あっても邪魔にはなりませんが、クリティカルな要因ではありません。高卒で、ビジネスの現場でデータ分析を躍動させている人財を知っています。米国の有名大学院卒だが、ビジネスの現場でデータ分析を上手く活用できていない人財も知っています。
「実践」は経験(失敗の場数)です。その経験から必要な知識として、データ分析手法やアルゴリズムの勉強をすれば事足ります。
「現場を熟知している人財」がキーファクター
ではどうすれば、「データ分析の手法偏重者」は、「実践」の経験(失敗の場数)を積めるのでしょうか?
同じ部署に「現場を熟知している人財」がいると、「実践」の経験(失敗の場数)を積めます。
先ず、身近に現場を熟知している人がいるというのは、非常に大きな要因です。すぐ聞けるからです。どのようなデータ分析が喜ばれ、どのような分析結果があれば実際に活用し、そして彼ら・彼女らを幸せにすることができそうかを。
さらに、「現場を熟知している人財」には現場とのコネクションがあります。ここが最大のポイントです。
何か疑問に思うことや気になることがあれば、現役の現場の人と会話をすることが、同じ部署にいる「現場を熟知している人財」を通してできます。そしてデータ活用を推進していくときに協力も得られやすいです。何よりも、現場から、データ分析で解決してもらいたい依頼が来やすくなります。
データ活用をすべき現場とデータ分析する人の間に強力なパイプがあることで、「データ分析の手法偏重者」はどんどん「実践」の経験(失敗の場数)を積めます。
今回のまとめ
今回は、「データ分析の専門部署は、現場を知る人財との混合チームがいい。データ分析の手法偏重者には気をつけろ!」というお話しをしました。
データ分析の専門部署を新設するとき、「現場を熟知している人財」と「データ分析を熟知している人財」の混合チームにすると上手くいきやすいというお話しです。
そして、私の経験上、データ分析の専門部署には、「データ分析を熟知している人財」よりも「現場を熟知している人財」が多い方が上手くいきます。私のような現場感のない分析バカを多数派にしないためです。
ちなみに、私の最初にいた部署は……
「現場を熟知している人財」:「データ分析を熟知している人財」=2:1
……の割合でした。
この比率には、「データ分析を熟知している人財」に「データ分析の手法偏重者」も含めています。当時の私を含めた若造は、ほぼ確実に「データ分析の手法偏重者」ですから。
あなたの会社でデータ分析の専門部署を新設もしくは見直すときに、参考にして頂けたら幸いです。
ちなみに、「現場を熟知している人財」には、データ分析の知識や経験を求めてはいけません。興味や関心があるというレベルで十分です。