第90話|受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析

第90話|受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析

社内にろくなデータがないんだけど……

どのような会社にもあるデータがあります。受注に関するデータです。このデータがなければ、売上が計上できません。

このような受注履歴や売上データからだけでも、何かしら分析ができます。

例えば、法人相手にビジネスをしているBtoB企業の場合、購入者と販売した商材が直接紐づきます。

一般消費者相手にビジネスしているBtoC企業であっても、購入者と販売した商材が直接紐づいたデータのある企業もあります。通販やエステ、自動車販売、不動産、英会話スクールなどです。

このような、購入者と販売した商材が直接紐づいたデータ、いわゆる受注履歴データを使うことで、色々なデータ分析ができます。

今回は、「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをします。

3大テーマ

マーケティンや営業などの、販売力を高めるデータ分析であるセールスアナリティクスには、3つの大きなテーマがあります。

以下の3つです。

  • (1) 新規顧客の獲得
  • (2) 既存顧客の離反阻止
  • (3) 既存顧客の取引拡大

セールスアナリティクスのビジネス成果として、以下の2つがあります。

  • 顧客数
  • LTV(顧客生涯価値)

顧客数を増やすには、(1)の「新規顧客の獲得」と(2)の「既存顧客の離反阻止」が必要です。単に新規顧客を増やしただけではだめで、いかに離反顧客を減らすのかも重要になってきます。

LTV(顧客生涯価値)とは、「年間取引額×取引年数」です。したがって、(2)の「既存顧客の離反阻止」することで長いお付き合いを目指しつつ、(3)の「既存顧客の取引拡大」を目指します。

そう考えると、キーになるのは(2)の「既存顧客の離反阻止」になります。

しかし、既存顧客の離反は、顧客がいなければなりません。その顧客を増やすのが(1)の「新規顧客の獲得」です。

理想の新規顧客

では、理想の新規顧客とは、どのようなお客様でしょうか?

人によって答えは変わってくるとは思いますが、LTV(顧客生涯価値)の視点から考えると、以下のようになります。

長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様

つまり、LTV(顧客生涯価値)の大きくなりそうなお客様が、理想の新規顧客ということです。

いまどうなっているのか?

受注履歴データから、次のことが分かりかと思います。

各顧客ごとの……

  • 取引開始日
  • 取引期間
  • 年間取引額
  • 取引商材
  • 担当営業

……などです。

以下のような顧客情報もわかることでしょう。

各顧客ごとの……

  • 業種/業態
  • 企業規模
  • 業績
  • 取引部署

……などです。

すぐできるのは、「いまどうなっているのか?」の分析です。集計レベルで十分でしょう。

なんちゃってLTV(顧客生涯価値)

例えば、現時点の累積取引額。「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」です。

取引が停止している顧客であれば、「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」ではなく「正確なLTV(顧客生涯価値)」となることでしょう。

取引が停止しなければ、正確なLTV(顧客生涯価値)は計算できませんが、現状どの程度の規模の取引になったのかは分かります。

「取引停止中」と「取引中」の顧客に分け、「取引年数(ヨコ軸)×平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット)を作ることで、どのような顧客がLTV(顧客生涯価値)が高くなりそうなのかが、なんとなく見えてくるのではないでしょうか。マップの右上にプロットされている顧客が理想です。

取引先のデータが十分にあれば、例えば「2000年に取引開始した企業」という形でデータを限定させ、1年で取引が終了した企業、5年取引が継続した企業、10年取引が継続した企業、未だ取引が継続している企業などを集計するといいでしょう。

このような、集計だけでも見えてくることはたくさんあります。

入口は何か?

問題は、「理想の新規顧客」である「LTVの大きくなりそうな顧客」を見つけることです。

入口に注目します。つまり、取引開始時の状況です。

どのような顧客と、どのような取引をしたのか? を調べます。

例えば、LTVの大きい顧客の……

  • 業種/業態は?
  • 企業規模は?
  • 業績は?
  • 取引部署は?
  • 取引商材は?
  • 担当営業は?

……などです。記録として残っているもので十分です。

このことから、どのような顧客と、どのような取引をするといいのかが、何となく見えてくることでしょう。

ちなみに、LTV(顧客生涯価値)を見積もりたい場合には、例えば「LTV予測モデル」を構築すればいいでしょう。

LTV予測モデル

もし、「LTV予測モデル」を構築してあるならば、現在ターゲット企業の中で、最もLTV(顧客生涯価値)の予測値の高い企業を軸に、営業・販促活動を展開することが考えられます。

当然ながら、このLTV(顧客生涯価値)の予測値は、単なる目安に過ぎません。未来に対し何の情報もなくターゲット企業を選択するぐらいであれば、何かしら情報があったほうがいい、といった感じです。

このように、受注履歴データだけでも、新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析を実施することができます。

今回のまとめ

今回は、「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをしました。

法人相手にビジネスをしているBtoB企業であれば、必ずあるデータです。このようなデータを使うことで、新規顧客のターゲット選定ができます。

このとき、できれば理想の新規顧客を選択したいものです。では、理想の新規顧客とは、どのようなお客様でしょうか?

LTV(顧客生涯価値)の視点から考えると、「長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様」です。

例えば、今までの累積取引額と取引年数から、「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」します。取引が停止している顧客であれば、「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」ではなく「正確なLTV(顧客生涯価値)」になります。

あとは、「取引年数(ヨコ軸)×平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット)を作つくり、マップの右上にプロットされている顧客から、どのような顧客がLTV(顧客生涯価値)が高くなりそうなのかを見ていきます。

このとき、「LTV(顧客生涯価値)が高くなりそうな顧客の、初取引時の状況」を分析します。入口の分析です。

どのような顧客と、どのような取引をしたのか? を分析し、新規顧客のターゲット選定に役立てます。

若干のデータ整備が必要になるかもしれませんが、興味ある方は一度チャレンジしてみてください。何かしら見えてくることがあると思います。