社内にろくなデータがないんだけど……
どのような会社にもあるデータがあります。受注に関するデータです。このデータがなければ、売上が計上できません。
このような受注履歴や売上データからだけでも、何かしら分析ができます。
例えば、法人相手にビジネスをしているBtoB企業の場合、購入者と販売した商材が直接紐づきます。
一般消費者相手にビジネスしているBtoC企業であっても、購入者と販売した商材が直接紐づいたデータのある企業もあります。通販やエステ、自動車販売、不動産、英会話スクールなどです。
このような、購入者と販売した商材が直接紐づいたデータ、いわゆる受注履歴データを使うことで、色々なデータ分析ができます。
今回は、「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをします。
3大テーマ
マーケティンや営業などの、販売力を高めるデータ分析であるセールスアナリティクスには、3つの大きなテーマがあります。
以下の3つです。
- (1) 新規顧客の獲得
- (2) 既存顧客の離反阻止
- (3) 既存顧客の取引拡大
セールスアナリティクスのビジネス成果として、以下の2つがあります。
- 顧客数
- LTV(顧客生涯価値)
顧客数を増やすには、(1)の「新規顧客の獲得」と(2)の「既存顧客の離反阻止」が必要です。単に新規顧客を増やしただけではだめで、いかに離反顧客を減らすのかも重要になってきます。
LTV(顧客生涯価値)とは、「年間取引額×取引年数」です。したがって、(2)の「既存顧客の離反阻止」することで長いお付き合いを目指しつつ、(3)の「既存顧客の取引拡大」を目指します。
そう考えると、キーになるのは(2)の「既存顧客の離反阻止」になります。
しかし、既存顧客の離反は、顧客がいなければなりません。その顧客を増やすのが(1)の「新規顧客の獲得」です。
理想の新規顧客
では、理想の新規顧客とは、どのようなお客様でしょうか?
人によって答えは変わってくるとは思いますが、LTV(顧客生涯価値)の視点から考えると、以下のようになります。
「長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様」
つまり、LTV(顧客生涯価値)の大きくなりそうなお客様が、理想の新規顧客ということです。
いまどうなっているのか?
受注履歴データから、次のことが分かりかと思います。
各顧客ごとの……
- 取引開始日
- 取引期間
- 年間取引額
- 取引商材
- 担当営業
……などです。
以下のような顧客情報もわかることでしょう。
各顧客ごとの……
- 業種/業態
- 企業規模
- 業績
- 取引部署
……などです。
すぐできるのは、「いまどうなっているのか?」の分析です。集計レベルで十分でしょう。
なんちゃってLTV(顧客生涯価値)
例えば、現時点の累積取引額。「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」です。
取引が停止している顧客であれば、「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」ではなく「正確なLTV(顧客生涯価値)」となることでしょう。
取引が停止しなければ、正確なLTV(顧客生涯価値)は計算できませんが、現状どの程度の規模の取引になったのかは分かります。
「取引停止中」と「取引中」の顧客に分け、「取引年数(ヨコ軸)×平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット)を作ることで、どのような顧客がLTV(顧客生涯価値)が高くなりそうなのかが、なんとなく見えてくるのではないでしょうか。マップの右上にプロットされている顧客が理想です。
取引先のデータが十分にあれば、例えば「2000年に取引開始した企業」という形でデータを限定させ、1年で取引が終了した企業、5年取引が継続した企業、10年取引が継続した企業、未だ取引が継続している企業などを集計するといいでしょう。
このような、集計だけでも見えてくることはたくさんあります。
入口は何か?
問題は、「理想の新規顧客」である「LTVの大きくなりそうな顧客」を見つけることです。
入口に注目します。つまり、取引開始時の状況です。
どのような顧客と、どのような取引をしたのか? を調べます。
例えば、LTVの大きい顧客の……
- 業種/業態は?
- 企業規模は?
- 業績は?
- 取引部署は?
- 取引商材は?
- 担当営業は?
……などです。記録として残っているもので十分です。
このことから、どのような顧客と、どのような取引をするといいのかが、何となく見えてくることでしょう。
ちなみに、LTV(顧客生涯価値)を見積もりたい場合には、例えば「LTV予測モデル」を構築すればいいでしょう。
LTV予測モデル
もし、「LTV予測モデル」を構築してあるならば、現在ターゲット企業の中で、最もLTV(顧客生涯価値)の予測値の高い企業を軸に、営業・販促活動を展開することが考えられます。
当然ながら、このLTV(顧客生涯価値)の予測値は、単なる目安に過ぎません。未来に対し何の情報もなくターゲット企業を選択するぐらいであれば、何かしら情報があったほうがいい、といった感じです。
このように、受注履歴データだけでも、新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析を実施することができます。
今回のまとめ
今回は、「受注履歴から探る新規顧客ターゲット選定のためのデータ分析」というお話しをしました。
法人相手にビジネスをしているBtoB企業であれば、必ずあるデータです。このようなデータを使うことで、新規顧客のターゲット選定ができます。
このとき、できれば理想の新規顧客を選択したいものです。では、理想の新規顧客とは、どのようなお客様でしょうか?
LTV(顧客生涯価値)の視点から考えると、「長く取引を継続してもらえ、かつ、取引額も大きなお客様」です。
例えば、今までの累積取引額と取引年数から、「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」します。取引が停止している顧客であれば、「なんちゃってLTV(顧客生涯価値)」ではなく「正確なLTV(顧客生涯価値)」になります。
あとは、「取引年数(ヨコ軸)×平均年間取引額(タテ軸)」のマップ(顧客をマップ上にプロット)を作つくり、マップの右上にプロットされている顧客から、どのような顧客がLTV(顧客生涯価値)が高くなりそうなのかを見ていきます。
このとき、「LTV(顧客生涯価値)が高くなりそうな顧客の、初取引時の状況」を分析します。入口の分析です。
どのような顧客と、どのような取引をしたのか? を分析し、新規顧客のターゲット選定に役立てます。
若干のデータ整備が必要になるかもしれませんが、興味ある方は一度チャレンジしてみてください。何かしら見えてくることがあると思います。