データサイエンスには「目的を明確にすること」が大事だとよく言われます。
データサイエンスに限らず、仕事全般で言われることでしょう。
しかし、目的を明確にしてもデータサイエンスで失敗することは多々あります。
ここでいう成功とは、現場で活用され何かしらの成果(例:売上アップやコストカット、利益率改善、歩留まり最善、サイクルタイム短縮化など)を生むことです。
なぜ、目的を明確にしてもデータサイエンスで失敗するのでしょうか?
今回は、「なぜ、目的を明確にしてもデータサイエンスで失敗するのか? じゃぁどうする」というお話しをします。
Contents
松浦静山のありがたい言葉
よく「勝ちには偶然の勝ちがあり、負けには偶然の負けはない」と言われます。
江戸時代の剣豪である松浦静山(平戸藩主)の著書「剣談」に書かれている言葉です。
このことは、データサイエンスにも当てはまります。
目的が不明確でも上手くいくときは上手くいきますし、データが汚くてどうしようもないときでも上手くいくときがあります。
しかし、失敗するときにはある共通点があります。
目的が明確でも失敗することは多い
その共通点は「目的が不明確」だからというものではありません。
先ほど言いましたが、目的が明確でも失敗することは少なくありません。
少なくないというか、増えている印象すらあります。
「最初、目的が不明確で失敗した。次に、目的を明確にしたのに失敗した。じゃぁどうすればいいの?」といった感じです。
そこで、私は色々調べました。データサイエンスで成果をださないときの共通点は何かをです。
失敗するときの共通点
そこで分かったことがあります。
それは「活用イメージが明確ではない」というものです。
データサイエンスが上手く機能しないとき、「活用イメージが明確ではない」のです。
例
例えば、顧客の離脱分析(チャーン分析)。既存顧客との取引継続のためのデータ分析です。
よく離脱スコア(チャーンスコア)を算出し、現場に渡したりします。
離脱スコアが高い既存顧客ほど、離脱しやすいというものです。
「現場にこの離脱スコアを渡せばいいだろう」と考えがちですが、どのように離脱スコアを活用したらいいのかも提示しないと、使ってもらえません。
さらに、離脱スコアを提供する方法やタイミングなども重要です。
活用イメージがとっても重要な理由
実は、活用イメージがないと、どのようなデータ分析をしたり、どのような数理モデルを構築したりすればいいのか分かりません。
そのために必要となるデータも分かりません。
活用イメージがあれば、どのような情報を現場に提供すればいいのかが分かり、その情報を作るためのデータ分析や数理モデル構築をすることができます。
さらに、そのようなデータ分析や数理モデルを構築するための、必要なデータも分かります。
つまり、データサイエンスの「活用目的」が最初にあって、次にその「活用イメージ」があって、そして「分析イメージ」(データ分析やモデル構築など)を作るといった流れです。
活用イメージがないと手探り状態に陥る
活用イメージがないと、想像力だけでデータ分析や数理モデル構築をすることになります。
活用するかどうかは現場次第、といった感じです。データサイエンスの成否が人任せになってしまいます。
確実な成果を手にしたいなら、活用イメージが必ず明確にして必要があります。
当然ながら、現場へのヒアリングやディスカッションが必要になります。
活用イメージがあると見通しが立つ
この活用イメージを明確にすることで、どのくらいの成果を甘受できるのかも見えてきます。
現場は、どのように動けばいいのかが見えてきます。
データサイエンスを提供する側は、分析イメージが明確になり、どのようなデータ分析をすればいいのか、どのような数理モデルを構築すればいいのか、つまりどのタイミグで何をやればいいのかが明確になります。
この「活用目的」(テーマ)と「活用ストーリー」「分析ストーリー」のセットは複数作れます。
「データの輝ける場所」(筋のいいテーマ)の見つけ方
複数の、「活用目的」(テーマ)と「活用ストーリー」「分析ストーリー」のセットが出揃ったところで、以下の2つを見積もってみましょう。
- 成果の大きさ(できれば金額換算)
- やり易さ(簡単にできる、データがすでにある、など)
この2つの視点で、この「活用目的」(テーマ)と「活用ストーリー」「分析ストーリー」のセットを評価することで、「データの輝ける場所」(筋のいいテーマ)を見つけることができます。
筋のいいテーマとは、「活用目的」と「活用ストーリー」「分析ストーリー」が明確で、「成果が大きく、かつ、やり易いテーマ」です。
データサイエンス成否は「データの輝ける場所」(筋のいいテーマ)次第
データサイエンス成否は「データの輝ける場所」(筋のいいテーマ)次第です。
データサイエンティストが、あえてやり難いテーマを選ぶケースも多々目にします。
個人の挑戦よりもまずやるべきは、やり易いテーマで確実かつスピーティーに成果を出すことです。
挑戦することは止めませんが、要領良く成果をものにしていくのも重要です。
データサイエンスのテーマが決まれば、次にそれを現実のものとし、何らかの成果を甘受する必要があります。
絵に描いた餅に終わってしまいためにも、実現に向けた動きは非常に重要です。
今回のまとめ
今回は、「なぜ、目的を明確にしてもデータサイエンスで失敗するのか? じゃぁどうする」というお話しをしました。
よく「勝ちには偶然の勝ちがあり、負けには偶然の負けはない」と言われます。江戸時代の剣豪である松浦静山(平戸藩主)の著書「剣談」に書かれている言葉です。
データサイエンスの失敗(負け)に共通するのは、「活用イメージが明確ではない」というものです。
目的が明確であろうがなかろうが、失敗しているケースでは活用イメージが明確ではありません。
つまり、ビジネスの世界でデータサイエンスで失敗したくなければ、「活用イメージを明確にしろ」となります。
活用イメージを明確にすることのメリットは大きいです。
例えば……
- どのくらいの成果を甘受できるのかも分かる
- 現場は、どのように動けばいいのかが分かる
- 提供側は、どのようなデータ分析をすればいいのか分かる
- さらに、どのような数理モデルを構築すればいいのか分かる
- そのために、どのようなデータが必要なのかも分かる
……などです。
いいこと尽くめです。