1989年(平成元年)1月8日から2019年(平成31年)4月30日まで約30年続いた平成も今年(2019年)で終了しました。
1989年(平成元年)にはなかった「底知れぬ閉塞感」が、今日本社会に蔓延しているようです。
気のせいでしょうか。少なくとも、私はそのように感じます。
例えば、経済的な成長を実感できないことが、日本社会の閉塞感の大きな要因の1つではないでしょうか。
今回は、「データサイエンスで、日本社会の閉塞感に風穴を開ける!」というお話しをします。
Contents
1989年(平成元年)と30年後の2018年(平成30年)の経済状況を比べるとどうでしょうか?
最も分かりやすいのがGDP(国内総生産)でしょう。
国内で産み出された付加価値の総額のことで、GDPの伸び率が経済成長率に相当します。
日本の実質GDPは、1988年に388兆円、2018年に534兆円で、30年間で約138%の伸びです。
他国はどうなっているでしょうか。
- 米国は1989年に9兆1923億ドル、2018年に18兆5665億ドルで、約201%の伸びです
- ドイツは1988年に1兆8379億ユーロ、2018年に2兆9720億ユーロで、約162%の伸びです
- イギリスは1988年に1兆1544億ポンド、2018年に2兆335億ポンドで、約176%の伸びです
- 中国は1988年に6兆3024億人民元、2018年に84兆8926億人民元で、1347%の伸びです
- 韓国は1988年に382兆356億ウォン、2018年に1597兆5141億ウォンで、418%の伸びです
日本は伸び悩んでいることが分かります。
CAGR(年平均成長率)で見てみますと、1.07と1年間で7%しか経済成長していません。
そのことを反映するかのように、ここ30年で世界時価総額ランキングの上位の顔ぶれが大きく変わりました。
世界時価総額ランキング上位50社中32社が日本企業だったのですが……
DIAMOND online(2018年8月20日)の「昭和という『レガシー』を引きずった平成30年間の経済停滞を振り返る」(https://diamond.jp/articles/-/177641/)という記事があります。
記事によりますと……
- 平成元年の世界時価総額ランキング上位50社中32社が日本企業、
- 平成30年になると日本企業1社のみ
平成30年に、上位に君臨しているのがGAFMA(Google、Amazon、Facebook、Microsoft、Apple)です。
その中でGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)は、個人情報をはじめとした様々なデータを収集し、そして上手く活用することで競争優位な状況を作り出し急成長した米国の新興企業です。
このGAFAの中で1989年(平成元年)前からある企業はApple社だけです。
日本企業は、データを収集し上手く活用することが「苦手」なのでしょうか?
実は、そうでもないのです。
データサイエンスの一領域に、統計的品質管理(SQC)というものがあります。
日本の高度成長期、日本製品を世界最高品質に押し上げた大きな要因の一つです。
この統計的品質管理に貢献した民間の団体と個人に、デミング賞というものが贈られます。
ちなみに、デミング賞委員会の委員長は経済団体連合会の会長が務めています。
これまでにトヨタ自動車、日本電気、小松製作所、竹中工務店など日本を代表する企業がデミング大賞を受賞しています。
このように、データサイエンスには経済を飛躍させるパワーがあることを、日本人自らがすでに約40年前に世界に示しているのです。
しかし、2000年ごろから様相が一変します。ある国の企業の受賞が急激に増えます。インド企業です。
2000年以降にデミング大賞を受賞したのは15企業で、その内8社がインド企業で、日本企業は5社です。2000年より前にデミング大賞を受賞したインド企業は0です。
約40年前の日本人にできたことを、今の日本人ができないことはありません。
データサイエンスの環境は、40年前に比べ整っています。人財も増え、ツールも進化しています。
日本人に合っているのは、改善/変革のためのデータサイエンス
ビジネス系のデータサイエンスには、大きく2種類あります。
- データエコノミー系のデータサイエンス
- 改善/変革のためのデータサイエンス
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)が得意とするデータエコノミー系のデータサイエンスの方に目が行きがちです。
データビジネスやゲームチェンジャー、プラットフォーマーという言葉が脚光を浴びることから分かります。
しかし、統計的品質管理(SQC)から分かる通り、日本人に合っているのは「改善/変革のためのデータサイエンス」だと、私は感じています。
現場の課題に対し、データを上手く活用することで改善/変革していくということです。正直、地味です。
実は、よくよく考えてみると、データエコノミー系のデータサイエンスも、結局のところデータを上手く活用することで、課題解決をしています。
大きな違いは、その課題解決が自社内で閉じているのではなく、GAFAのサービスを利用している一般消費者や参画企業などにも波及し、1つの経済圏を作り上げていることです。
データエコノミー系のデータサイエンスとは、自社内に閉じていないオープンな「改善/変革のためのデータサイエンス」とも言えそうです。
何はともあれ、日本人に合っているのは「改善/変革のためのデータサイエンス」であることには変わりません。
その目を自社内で閉じるのではなく、自社外まで広げるだけです。
鍵を握るのは普通のビジネスパーソン
ビジネスでのデータサイエンスには、以下のような人財が必要になります。
- データサイエンティスト(AI/機械学習エンジニア含む)
- データエンジニア
- ドメインをつなぐデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」
- 社内政治力のあるデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」
- 社内IT専門家を仲介するデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」
ちなみに、ドメインとはデータサイエンスの活用領域(経営の現場、営業の現場、生産の現場など)のことです。
データサイエンティスト(AI/機械学習エンジニア含む)の不足が叫ばれていますが、本当に足りないのは「データリテラシーのあるビジネスパーソン」です。
特に次の2つです。
- ドメインをつなぐデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」
- 社内政治力のあるデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」
さらに絞ると次の1つです。
- ドメインをつなぐデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」
統計的品質管理(SQC)の成功は、生産の現場もしくは現場に近いところに、統計的品質管理の活動を推し進めるQCサークルというものを、組織内部に作ったからでしょう。
同じことをやれば良い、というわけではありませんが、少なくともQCサークルの中に「現場をつなぐことのできる統計的品質管理(SQC)がどういったものか理解している人財」が必ずいます。QCサークルが現場に作られる場合、つなぐも何も現場の当事者です。
今回のまとめ
今回は、「データサイエンスで、日本社会の閉塞感に風穴を開ける!」というお話しをしました。
1989年(平成元年)に比べ30年後の2018年(平成30年)の経済成長は、GDPの伸び率で約138%で、CAGR(年平均成長率)で見てみますと、1.07と1年間で7%しか経済成長していません。
世界時価総額ランキングを見てみますと、上位にあるのが、個人情報をはじめとした様々なデータを収集し、そして上手く活用することで競争優位な状況を作り出し急成長した米国の新興企業であるGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)です。
日本企業は、データを収集し上手く活用することが「苦手」なのかというと、そうでもなく、統計的品質管理(SQC)というデータサイエンスの力で、日本の高度成長期に日本製品を世界最高品質に押し上げました。
それだけではありませんが、大きな要因の一つです。
そのためには、ドメイン(データサイエンスの活用領域)をつなぐデータサイエンスを理解している「ビジネスパーソン」が必要になります。
特別なビジネスパーソンではなく、普通のビジネスパーソンです。ただ、データリテラシーがあるという条件が付きます。
このような。データリテラシーのあるビジネスパーソンを増やす必要があることでしょう。つまり、鍵を握るのは普通のビジネスパーソンです。
この一連のデータサイエンス、ビッグデータ、AIの諸ブームは、日本経済を飛躍させる絶好の機会です。日本社会の閉塞感に風穴を開けるチャンスです。