前回の「今週の小ばなし」(第146話)で、次のようなお話しをしました。
データを使い課題解決を考えたとき、例えば次の3つのことを、データから考えていきます。
- ①何が起こっていたのか(過去)
- ②どうなりそうか(未来)
- ③何をすればよいのか(アクション)
データ分析をするとき、必ず③の「アクション」まで導き出しましょう。そうしないと、単なるデータ分析で終わってしまいます。
この順番に、データを分析しながら考えていきます。
つまり、「何が起こっていたのか(過去)」を先ずは考える、ということです。
今回は、「先ずは、『何が起こっていたのか(過去)』を考える」というお話しをします。
Contents
先ず過去のデータで過去を理解しよう
データサイエンスや機械学習などから「予測」というポイントに目が行く方も少なくありません。
しかし、データは所詮過去の記録に過ぎません。
過去の記録から未来を予測するには、ひと工夫必要になります。
データを使った予測をするために、過去のデータ間の関係性を数理モデル化し、その数理モデルを利用して予測していきます。
そういう意味で、過去に「何が起こっていたのか」を、先ずは考えていくことは、非常に重要になってきます。
そもそも、予測するしないに関係なく「先ず過去のデータで過去を理解しよう」とする行為は、とても自然なことだと思います。
「見える化」の動機
データを蓄積する動機の1つに、よく「見える化」という言葉が使われます。
「見える化」して何をしたいかと言えば、「何が起こったいたのかを知りたい」ということでしょう。
問題が起こっていれば、対策を打つきっかけになりますし、何ごともなければ計画通り進めればいいわけです。
そのため、データを手にしたとき、過去に「何が起こっていたのか」を、先ずは考えていきす。
事実と解釈
この「何が起こっていたのか(過去)」を考えていくために、次の2つのことをデータ分析から導き出していきます。
- 事実:データから直接分かることは何か?
- 解釈:データの裏側で何が起こっているのか?
そのために、例えば、次のようなデータ分析を実施します。
- モニタリング
- 異常検知
- 要因分析
例えば、どのようなデータ分析をするのか?
モニタリングでは、得られたデータの状況を加工・集計し、場合によってはグラフなどで視覚化することで、どうなっているのかを見ていきます。
次に、その視覚化した数字に異常がないかどうかを見るために、異常検知を実施します。
さらに、その異常の原因が何であるかを考えていくために、要因分析を実施していきます。
これらの3つのデータ分析を通して「事実」を把握し、そこから何が起こっていたのかを「解釈」していきます。
簡単な分析技術でOK
利用する分析技術や数理モデルなどは、それほど高度なものではなく、従来からあるベタなものになります。
例えば、「QC7つ道具」や「新QC7つ道具」だけで十分分析可能です。
可能であれば、統計解析(多変量解析を含む)の知識があると、より良いでしょう。
「事実」は、誰が考えてもほぼ同じはず……
データから分かるのは、「ある事象」(例:受注など)の「1面の1部分」だけです。
そのため、実際に「何が起こっていたのか」は、データから直接は分かりません。
あくまでも、実際に何が起こっていたのかを「知る手がかり」にすぎません。
そのため、データから「事実」という手掛かりをつかみ、実際に「何が起こっていたのか」を「解釈」する必要があるのです。
そして、この「事実」は、誰が考えてもほぼ同じことが導かれます。データを見たまま読み取るからです。
例1:営業マーケティング
例えば……
- 「先月に比べ受注件数が10%増えた」
- 「昨年同月に比べ売上が25%落ちた」
- 「自社開催イベント経由のリード(見込み客)数が、計画値よりも25%多い」
……は誰が見ても同じです。
例2:生産
例えば……
- 「先週に比べ製品の良品数が50%増えた」
- 「歩留まり(良品の割合)が87%から58%に悪化した」
- 「製造ラインの稼働時間が、先月に比べ30%減少した」
……は誰が見ても同じです。
「解釈」は、人によって異なる
「事実」では、素直にデータを読み取ります。
感情や思い入れ、解釈など主観的な要素は極力排除して読み取ります。
「解釈」は、「事実」をもとに「何が起こっていたのか」を、その人の持っている情報や今まで培った経験値や感覚、考え方などを通して考えるため、人によって異なります。
例3:営業マーケティング
例えば、「先月に比べ受注件数が10%増えた」に対する「解釈」は……
- 「受注件数が10%増えたのは『営業が頑張った』からだ」、
- 「受注件数が10%増えたのは『商材の評判が良くなった』からだ」、
- 「受注件数が10%増えたのは『リード(見込み顧客)の質が高まった』からだ」
……のように人によって異なります。
例4:生産
例えば、「歩留まり(良品の割合)が87%から58%に悪化した」に対する「解釈」は……
- 「歩留まりが58%に悪化したのは『猛暑に対応した機器の温度設定が適切でなかった』からだ」、
- 「歩留まりが58%に悪化したのは『材料のサプライヤーが変わり材料特性がやや変化した』からだ」、
- 「歩留まりが58%に悪化したのは『長期休暇明けだった』からだ」
……のように人によって異なります。
どの「解釈」が正しいのか?
誰のどのような「解釈」が正しいのかは、本当のところ誰も分かりません。
少なくとも、「解釈」が現場から見たら「荒唐無稽なこと」にならないように注意しましょう。
そのためにも、現場のは「解釈」に強く影響させたほうがよいです。
近視眼的になりやすいという欠点はありますが、現場で起こっていることは現場の人にしか分かりません。
多くの場合、現場の頭の中にある「現場感」(感覚的な現場の定性情報)はデータ化されていないので、集めたデータには表れてきません。
つまり「解釈」は、「事実」と現場の頭の中にある「現場感」(感覚的な現場の定性情報)を掛け合わせることで、実際に「何が起こっていたのか」を垣間見ることです。
今回のまとめ
今回は、「先ずは、『何が起こっていたのか(過去)』を考える」というお話しをしました。
データを使い課題解決を考えたとき、例えば次の3つのことを、データから考えていきます。
- ①何が起こっていたのか(過去)
- ②どうなりそうか(未来)
- ③何をすればよいのか(アクション)
「何が起こっていたのか(過去)」を先ずは考えていきます。
この「何が起こっていたのか(過去)」を考えていくために、次の2つのことをデータ分析から導き出していきます。
- 事実:データから直接分かることは何か?
- 解釈:データの裏側で何が起こっているのか?
そのために、例えば、次のようなデータ分析を実施します。
- モニタリング
- 異常検知
- 要因分析
データから「事実」を把握し、何が起こっていたのかを「解釈」しても、このままではあくまでも「過去」のことを語ったに過ぎません。
そのために、次に「どうなりそうか(未来)」を考えていくことになります。