「今週の小ばなし」の第146話で、次のようなお話しをしました。
データを使い課題解決を考えたとき、例えば次の3つのことを、データから考えていきます。
- ①何が起こっていたのか(過去)
- ②どうなりそうか(未来)
- ③何をすればよいのか(アクション)
データ分析をするとき、必ず③の「アクション」まで導き出しましょう。そうしないと、単なるデータ分析で終わってしまいます。
この順番に、データを分析しながら考えていきます。
前回は、その中で②の「どうなりそうか(未来)」をお話ししました。次に、その未来の中で「何をすればよいのか(アクション)」を考える必要があります。
今回は、「そして、『何をすればよいのか(アクション)』を考える」というお話しをします。
Contents
データ分析で導き出す5つのこと
- 事実:データから直接分かることは何か?
- 解釈:データの裏側で何が起こっているのか?
- 延長:そのまま何も対策を打たないとどうなるのか?
- 対策:どのような対策を打つべきか?
- 解決:対策を打つとどうなるのか?
「事実」と「解釈」は、過去から現在までのことです。
「延長」と「対策」、「解決」は、現在から未来のことです。
2つのデータ分析
「何をすればよいのか(アクション)」を考えていくために、次の2つのことをデータ分析から導き出していきます。
- 対策:どのような対策を打つべきか?
- 解決:対策を打つとどうなるのか?
そのために、次のデータ分析を実施していくことになります。
- 将来予測
- レコメンド
将来予測
「どうなりそうか(未来)」では、「将来予測」に関するデータ分析をし、いくつかの「対策案」とその「効果の大きさ」(「延長」と「解決」のギャップ)を考えます。
例えば……
- そのまま何も対策を打たないと売上がどうなるのか?
- 対策を打つと売上がどうなるのか?
……という感じの将来予測を実施します。
「何をすればよいのか(アクション)」では、いくつかの「対策案」を多様な評価軸で絞りこむための、「将来予測」に関するデータ分析を実施します。
「効果の大きさ」に関する評価軸だけでなく、例えば……
- 費用対効果
- 実現可能性
……などの評価軸も考慮し、具体的に実施するアクションを検討し決めます。
どうせならレコメンド
単に未来を予測し評価するよりも、「〇〇すべき」や「〇〇したほうが良い」などのアクションをレコメンドできたほうがいいでしょう。
データ分析の結果を積み上げながら議論し、すべきことを取りまとめ提言する「人的レコメンド」もいいです。
レコメンドのための数理モデル(レコメンドエンジン)を構築しレコメンドする「機械的レコメンド」もいいでしょう。
レコメンドのためのデータ分析
レコメンドのためのデータ分析といっても、いくつかやり方があります。
例えば、次の3つです。
- シミュレーションによる試行錯誤
- 数理最適化モデル
- レコメンドモデル
シミュレーションによる試行錯誤
「シミュレーションによる試行錯誤」とは、構築した予測モデルを使い、シミュレーションを実施することで、最適なアクションを探ろうというアプローチです。
「X(説明変数)を変化させたときにY(説明変数)がどうなるのか?」をシミュレーションしながら、実施すべき施策を検討します。
数理最適化モデル
「数理最適化モデル」とは、数理計画法というアルゴリズムを使って、最適解を数理的に求めるアプローチです。
「シミュレーションによる試行錯誤」のような試行錯誤をせずに求めるのが特徴です。
例えば……
- マーケティングの広告・販促であればmROI(Marketing Return On Investment)を最大化する広告・販促費の最適配分(説明変数X、Xはコスト配分)を求める
- 開発・生産系であれば一定基準以上の品質特性(通常、目的変数Yは1変量ではなく多変量)を実現するための最適な設計条件(説明変数X)を求める
……であるとか、目的変数Yを最大化もしくは最小化するための説明変数Xを算出します。
数理計画法(線形計画法・非線形計画法・混合整数計画法など)のモデリング技術(事象の数式化)はそれなりのスキルが必要なため、ツールがあればできるというものではありませんが、非常に強力な手段の1つです。
レコメンドモデル
「レコメンドモデル」とは、協調フィルタリングなどのレコメンド用の数理モデルを使い、実施すべきアクションを求めるアプローチです。
簡単な協調フィルタリングであれば、EXCELだけでも実現可能です。
協調フィルタリングのようなレコメンド用の数理モデルを使うのではなく、単回帰モデルや重回帰モデルなどの簡単な数理モデルを活用することで、レコメンドを実施することも可能です。
人はレコメンド通りには動かない
最後に1つ、忘れていけないことがあります。
それは、多くの人はレコメンド通りには動かないということです。
例えば、Amazonがレコメンドした書籍を、毎回そのまま購入する人は少ないと思います。参考にするかもしれませんが、最後は人が意思決定し購入していることでしょう。
先ほど例であげた、広告費の最適配分の例の場合、数理最適化モデルを活用することで、ズバッと最適なコストの構成比が出てきます。
私の経験上、数理的に算出した最適配分の通りに、広告予算を組むことはまずありません。このレコメンドされた最適予算配分をもとに、人が最後調整して決めます。
要は、レコメンドされたことを参考に、最後は微調整し意思決定することが多いと思います。もしかしたら、最終的な意思決定をAI(人工知能)が実施する時代が来るかもしれません。
今回のまとめ
今回は、「そして、『何をすればよいのか(アクション)』を考える」というお話しをしました。
「何をすればよいのか(アクション)」では、次の2つのことをデータを分析し導き出す。
- 対策:どのような対策を打つべきか?
- 解決:対策を打つとどうなるのか?
「どうなりそうか(未来)」とほぼ同じではないかと思われがちですが、ちょっと異なります。
「何をすればよいのか(アクション)」では、「どうなりそうか(未来)」で出された、いくつかの「対策案」とその「効果の大きさ」(「延長」と「解決」のギャップ)をもとに、実施する対策案を検討し決定するためのデータ分析を実施します。
そのために、次のデータ分析を実施していくことになります。
- 将来予測
- レコメンド
単に未来を予測し評価するよりも、「〇〇すべき」や「〇〇したほうが良い」などのアクションをレコメンドできたほうがいいでしょう。