データを活用し何かしようという取り組みは、10年前と比べると、かなり増えています。
それが……
- ビッグデータだの
- AI(人工知能)だの
- データサイエンスだの
- 機械学習(マシーンラーニング)だの
- DX(デジタルトランスフォーメーション)だの
……のキーワードを旗印に増えています。
それが、PoC(実証実験)などを通し、「とらぬ狸の皮算用」的な本格運用してみたら……
「思ったほどでもなかった」
……ということがあります。
思ったほどでもなかったが、そのままずるずる続け、謎にPL(損益計算書)上の数字(売上や利益など)の悪化を招き続けることがあります。
今回は、「ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだの…… データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」というお話しをします。
一度始めたら止められない
「とらぬ狸の皮算用」的な本格運用してみたら、思ったほどでもなかったならば、何かしらの修正をすれば済みます。
それが、修正可能なモノかどうかは重要です。
「とらぬ狸の皮算用」上の前提が大きく異なるのであれば、その前提を変えたもとで、どのように修正すればいいのかを検討することになります。
それが、どうしようもないものであれば、当然ながら、このデータ活用の取り組みはストップすべきでしょう。
しかし、世の中不思議なもので……
- 「一度始めたから」
- 「始めて3年経つから」
- 「ITシステムを構築したから」
……という謎の理由で、続けることを前提に検討したりします。
当然の結論として、「そのまま続行」という判断が下されます。
さらに不思議なことに、「そのまま続行」だけが守られ、続行上必要な修正が、あまりなされていないように感じています。
要は、「一度始めたら止められない」ということです。
何のためにやっているのか?
そのような状況を目の当たりにすると……
「何のためにやっているのか?」
……と問いたくなります。
実際に……
「何のためにやっているのですか?」
……と問えば……
「コストダウンのためです」
「業務効率のためです」
「DX(デジタルトランスフォーメーション)のためです」
……などの回答が得られます。
要は、DXで業務効率化し無駄を削り取り筋肉質な組織に生まれ変わり、結果的に無駄なコストをダウンするためでしょう。
PL(損益計算書)上の数字としては、営業利益や事業貢献利益などの数字が改善されるはずです。
無駄を削り取り筋肉質になるのですから、何かしらの利益が向上するはずです。
問題なのは、何かしらの利益が向上するのではなく、利益を悪化させているからです。
取り急ぎ4つの数字で見てみよう!
どのようなキーワード(ビッグデータ、AI、データサイエンスなど)を旗印に上げるのかに関係なく、次の4つの数字を見積もってみましょう。
- データ活用による「売上アップ額」
- データ活用による「売上ダウン額」
- データ活用による「コストダウン額」
- データ活用による「コストアップ額」
ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだのの、データ活用の取り組みの前後で、この変化を見ます。
すべての変化が起こるわけではありません。
例えば、生産系であれば「コストダウン」と「コストアップ」が起こります。あまり、売上を直接的に左右するケースは少ないことでしょう。その場合、「売上アップ」や「売上ダウン」は起こせないかもしれません。
1つ言えるのは、データ活用の取り組みは確実に「コストアップ」が起こるということです。
人を採用すれば人件費というコストがアップしますし、分析用のツールやシステム導入るればそのコストがアップします。
データ活用によって、新たな業務が発生すれば、それはデータ活用による「コストアップ」です。外注や協力会社を利用すれば、その分だけコストアップします。
よくある”やばい”ケース
最近よくみる“やばい”ケースがあります。
よくあるのが、データ活用の成果を「売上アップ」と「コストダウン」しか見ていないケースです。
何も見ていないよりましですが、データ活用は確実に「コストアップ」が発生します。
ある企業で、「コストダウン」と「コストアップ」の金額を比べたら、「コストダウンの額」に比べ「コストアップ額」が約10倍になっていたケースがあります。
3,000万円のコストダウンのために3億円使っていた、といった感じです。ほぼ、ツール代と外部コンサルフィーでした。
本当に“やばい”ケースはここからです。
このような“やばい”状況を、目の当たりにしても「止められない」のです。
他部署のデータ活用を支援する組織が、自分たちの活動をデータで判断していないのです。
意味不明です。大企業に多いイメージがあります。
このような組織を、「データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」と呼んでいます。
先ずはデータの存在を忘れるところから始めよう!
このような「一度始めたら止められない」ケースには、ある共通項があります。
次の3つです。
- データ活用で、何かしら成果を出している
- テーマ選定が、「データを何とか活かそう!」から来ている
- マスメディアに取り上げられたり、もしくは外部発表をしている
先ほどの例ですと、小さいながらも3,000万円のコストカットという成果を出している、そして、社外発表もなされメディアにも取り上げられ取材も受けている。
そして、そのテーマが「データを何とか活かそう!」というモチベーションから来ている。
要は……
- 社内外のデータを活かそうと始めた取り組みで、
- 小さいながらも成果が出、
- ヨコ展開すると数10倍から数100倍になるはずだ!
- ということで対外発表しメディア受けもよく、
- なんと株価まで上げた、
……という感じです。
この事例から分かるのは、「テーマ選定が、『データを何とか活かそう!』から来ている」というところです。
そこが大きな間違いだと、私は感じています。
手段であるデータ活用を目的化し、その目的(データを何とか活かそう!)が達成したものだから、その目的を遺棄することができないのです。
データ活用という手段が手段のままであれば、データ活用により達成すべき「本来の目的」に近づくために、データ活用という手段にこだわることなく、別の手段へと変化させることができるのではないか、と思います。
要は、本来の目的を達成するためのテーマを選定するとき、「データを活用しろ!」という指令があっても、「先ずは、データの存在を忘れ、本来の目的のテーマを考えよう」ということです。
その結果、データを活用することもあれば、データを活用しないこともあります。
本体の目的を達成する上で、それば本来どちらでもいいはずです。
今回のまとめ
今回は、「ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだの…… データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」というお話しをしました。
「とらぬ狸の皮算用」的な本格運用してみたら、思ったほどでもなく、どうしようもないのならば、このデータ活用の取り組みはストップすべきでしょう。
世の中不思議なもので、このような状況に陥ったとき……
- 「一度始めたから」
- 「始めて3年経つから」
- 「ITシステムを構築したから」
……という謎の理由で継続したりします。
どのようなキーワード(ビッグデータ、AI、データサイエンスなど)を旗印に上げるのかに関係なく、次の4つの数字を見積もってみましょう。
- データ活用による「売上アップ額」
- データ活用による「売上ダウン額」
- データ活用による「コストダウン額」
- データ活用による「コストアップ額」
ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだのの、データ活用の取り組みの前後で、この変化を見ます。
すべての変化が起こるわけではありません。1つ言えるのは、データ活用の取り組みは確実に「コストアップ」が起こるということです。
ある企業で、「コストダウンの額」に比べ「コストアップ額」が約10倍になっていたケースがあります。3,000万円のコストダウンのために3億円使っていた、といった感じです。
本当に“やばい”ケースはここからです。
このような”やばい”状況を、目の当たりにしても「止められない」のです。
このような組織を、「データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」と呼んでいます。
このようなケースで共通しているのは、「テーマ選定が、『データを何とか活かそう!』から来ている」というところです。
手段であるデータ活用を目的化し、その目的(データを何とか活かそう!)が達成したものだから、その目的を遺棄することができないのです。
要は、本来の目的を達成するためのテーマを選定するとき、「データを活用しろ!」という指令があっても、「先ずは、データの存在を忘れ、本来の目的のテーマを考えよう」ということです。