第171話|ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだの…… データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々

第171話|ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだの…… データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々

データを活用し何かしようという取り組みは、10年前と比べると、かなり増えています。

それが……

  • ビッグデータだの
  • AI(人工知能)だの
  • データサイエンスだの
  • 機械学習(マシーンラーニング)だの
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)だの

……のキーワードを旗印に増えています。

それが、PoC(実証実験)などを通し、「とらぬ狸の皮算用」的な本格運用してみたら……

思ったほどでもなかった

……ということがあります。

思ったほどでもなかったが、そのままずるずる続け、謎にPL(損益計算書)上の数字(売上や利益など)の悪化を招き続けることがあります。

今回は、「ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだの…… データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」というお話しをします。

一度始めたら止められない

とらぬ狸の皮算用」的な本格運用してみたら、思ったほどでもなかったならば、何かしらの修正をすれば済みます。

それが、修正可能なモノかどうかは重要です。

とらぬ狸の皮算用」上の前提が大きく異なるのであれば、その前提を変えたもとで、どのように修正すればいいのかを検討することになります。

それが、どうしようもないものであれば、当然ながら、このデータ活用の取り組みはストップすべきでしょう。

しかし、世の中不思議なもので……

  • 一度始めたから
  • 始めて3年経つから
  • ITシステムを構築したから

……という謎の理由で、続けることを前提に検討したりします。

当然の結論として、「そのまま続行」という判断が下されます。

さらに不思議なことに、「そのまま続行」だけが守られ、続行上必要な修正が、あまりなされていないように感じています。

要は、「一度始めたら止められない」ということです。

何のためにやっているのか?

そのような状況を目の当たりにすると……

何のためにやっているのか?

……と問いたくなります。

実際に……

何のためにやっているのですか?

……と問えば……

コストダウンのためです
業務効率のためです
DX(デジタルトランスフォーメーション)のためです

……などの回答が得られます。

要は、DXで業務効率化し無駄を削り取り筋肉質な組織に生まれ変わり、結果的に無駄なコストをダウンするためでしょう。

PL(損益計算書)上の数字としては、営業利益や事業貢献利益などの数字が改善されるはずです。

無駄を削り取り筋肉質になるのですから、何かしらの利益が向上するはずです。

問題なのは、何かしらの利益が向上するのではなく、利益を悪化させているからです。

取り急ぎ4つの数字で見てみよう!

どのようなキーワード(ビッグデータ、AI、データサイエンスなど)を旗印に上げるのかに関係なく、次の4つの数字を見積もってみましょう。

  • データ活用による「売上アップ額
  • データ活用による「売上ダウン額
  • データ活用による「コストダウン額
  • データ活用による「コストアップ額

ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだのの、データ活用の取り組みの前後で、この変化を見ます

すべての変化が起こるわけではありません。

例えば、生産系であれば「コストダウン」と「コストアップ」が起こります。あまり、売上を直接的に左右するケースは少ないことでしょう。その場合、「売上アップ」や「売上ダウン」は起こせないかもしれません。

1つ言えるのは、データ活用の取り組みは確実に「コストアップ」が起こるということです。

人を採用すれば人件費というコストがアップしますし、分析用のツールやシステム導入るればそのコストがアップします。

データ活用によって、新たな業務が発生すれば、それはデータ活用による「コストアップ」です。外注や協力会社を利用すれば、その分だけコストアップします。

よくある”やばい”ケース

最近よくみる“やばい”ケースがあります。

よくあるのが、データ活用の成果を「売上アップ」と「コストダウン」しか見ていないケースです。

何も見ていないよりましですが、データ活用は確実に「コストアップ」が発生します。

ある企業で、「コストダウン」と「コストアップ」の金額を比べたら、「コストダウンの額」に比べ「コストアップ額」が約10倍になっていたケースがあります。

3,000万円のコストダウンのために3億円使っていた、といった感じです。ほぼ、ツール代と外部コンサルフィーでした。

本当に“やばい”ケースはここからです。

このような“やばい”状況を、目の当たりにしても「止められない」のです。

他部署のデータ活用を支援する組織が、自分たちの活動をデータで判断していないのです。

意味不明です。大企業に多いイメージがあります。

このような組織を、「データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」と呼んでいます。

先ずはデータの存在を忘れるところから始めよう!

このような「一度始めたら止められない」ケースには、ある共通項があります。

次の3つです。

  • データ活用で、何かしら成果を出している
  • テーマ選定が、「データを何とか活かそう!」から来ている
  • マスメディアに取り上げられたり、もしくは外部発表をしている

先ほどの例ですと、小さいながらも3,000万円のコストカットという成果を出している、そして、社外発表もなされメディアにも取り上げられ取材も受けている

そして、そのテーマが「データを何とか活かそう!」というモチベーションから来ている

要は……

  • 社内外のデータを活かそうと始めた取り組みで、
  • 小さいながらも成果が出、
  • ヨコ展開すると数10倍から数100倍になるはずだ!
  • ということで対外発表しメディア受けもよく、
  • なんと株価まで上げた、

……という感じです。

この事例から分かるのは、「テーマ選定が、『データを何とか活かそう!』から来ている」というところです。

そこが大きな間違いだと、私は感じています。

手段であるデータ活用を目的化し、その目的(データを何とか活かそう!)が達成したものだから、その目的を遺棄することができないのです。

データ活用という手段が手段のままであれば、データ活用により達成すべき「本来の目的」に近づくために、データ活用という手段にこだわることなく、別の手段へと変化させることができるのではないか、と思います。

要は、本来の目的を達成するためのテーマを選定するとき、「データを活用しろ!」という指令があっても、「先ずは、データの存在を忘れ、本来の目的のテーマを考えよう」ということです。

その結果、データを活用することもあれば、データを活用しないこともあります。

本体の目的を達成する上で、それば本来どちらでもいいはずです。

今回のまとめ

今回は、「ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだの…… データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」というお話しをしました。

とらぬ狸の皮算用」的な本格運用してみたら、思ったほどでもなく、どうしようもないのならば、このデータ活用の取り組みはストップすべきでしょう。

世の中不思議なもので、このような状況に陥ったとき……

  • 一度始めたから
  • 始めて3年経つから
  • ITシステムを構築したから

……という謎の理由で継続したりします。

どのようなキーワード(ビッグデータ、AI、データサイエンスなど)を旗印に上げるのかに関係なく、次の4つの数字を見積もってみましょう。

  • データ活用による「売上アップ額
  • データ活用による「売上ダウン額
  • データ活用による「コストダウン額
  • データ活用による「コストアップ額

ビッグデータだのAIだのデータサイエンスだのの、データ活用の取り組みの前後で、この変化を見ます。

すべての変化が起こるわけではありません。1つ言えるのは、データ活用の取り組みは確実に「コストアップ」が起こるということです。

ある企業で、「コストダウンの額」に比べ「コストアップ額」が約10倍になっていたケースがあります。3,000万円のコストダウンのために3億円使っていた、といった感じです。

本当に“やばい”ケースはここからです。

このような”やばい”状況を、目の当たりにしても「止められない」のです。

このような組織を、「データ活用の失敗をデータで判断することのできない人々」と呼んでいます。

このようなケースで共通しているのは、「テーマ選定が、『データを何とか活かそう!』から来ている」というところです。

手段であるデータ活用を目的化し、その目的(データを何とか活かそう!)が達成したものだから、その目的を遺棄することができないのです。

要は、本来の目的を達成するためのテーマを選定するとき、「データを活用しろ!」という指令があっても、「先ずは、データの存在を忘れ、本来の目的のテーマを考えよう」ということです。