市場反応分析(Market Response Analysis)では、広告・価格変更・販促・営業などのマーケティング活動に対する反応(売上や購買行動など)を分析します。
比較的やりやすく、多くの人に関心をもられやすいデータ分析・活用の1つです。
そのためか、古くから色々な市場反応分析(Market Response Analysis)方法や数理モデルが提案されています。
ビジネス活動をする上で、知っていて損はないと思います。
今回は、「2つの市場反応分析(Market Response Analysis)」というお話しをします。
Contents
2つの市場反応分析、集計 or 個別
この手のデータ分析の多くは、「森」を見るのか「木」を見るのか、という視点で2つに分かれます。
- 「森」を見る「集計レベルのデータ分析」
- 「木」を見る「非集計レベルのデータ分析」
今回の「森」は、売上やシェアなどの集計レベルの反応を見る分析を指します。
一方、今回の「木」は、個々の消費者の購買行動の変化を見る分析を指します。
「木」を見る「非集計レベルのデータ分析」は、どの顧客がどの商材をいくらでいつ購買したのかという、顧客の購買行動に関するデータが必要になります。
最も大きな違いは、扱うデータの粒度が異なるということです。一方は売上などの集計データで、もう一方は消費者個々の購買データです。
結局のところ、マーケティング活動に対する反応というか効果を知りたい
先程、市場反応分析には2種類あるというお話しをしました。一様名前がついています。
- 集計市場反応分析(集計レベルのデータ分析)
- 消費者購買行動分析(非集計レベルのデータ分析)
2つに共通しているのは、広告・価格変更・販促・営業などのマーケティング活動に対する反応を分析する、というところです。
例えば……
- どのくらい広告量を投下すると、どのくらい売上が上がるのか?
- テレビCMを止めると、どのくらい売上が落ちるのか?
- どのくらい価格を下げると、どのくらいマーケットシェアが増えるのか?
- マーケットシェアを大きく落とさず、どれぐらいまで価格を上げられるのか?
- 新聞の折込チラシの量の飽和点は? 最も費用対効果が最大化する量は?
……などです。
個々のマーケティング活動の売上寄与度を計算することができれば、マーケティング活動に依存しない売上などのベースラインを把握することができます。
2つの市場反応分析の違い
集計市場反応分析(集計レベルのデータ分析)の場合、以下のことを明らかにするために実施することが多いです。
- 売上などのベースラインの測定
- マーケティング活動の効果測定
一方、消費者購買行動分析(非集計レベルのデータ分析)の場合、以下のことを明らかにするために実施することが多いです。
- 購買メカニズムの把握
- マーケティング活動の個々の消費者への効果測定
2つの集計市場反応分析
売上などのベースラインの測定やマーケティング活動の効果測定などを実施する集計市場反応分析ですが、色々なものがあります。
ざっくり以下の2種類あります。
- 売上反応分析
- マーケットシェア反応分析
どちらも、通常の統計モデルや機械学習モデルと同様に、目的変数Yと説明変数Xからなる数理モデルを構築することが多いです。市場反応モデルやマーケットシェアモデルという分かりやすい名前で呼ばれています。
売上反応分析とマーケットシェア反応分析
売上反応分析とマーケットシェア反応分析の大きな違いは、目的変数Yにあります。
- 売上反応分析の目的変数Y:売上
- マーケットシェア反応分析の目的変数Y:マーケットシェア
説明変数Xは、どちらも広告の投下量や販売価格などのマーケティング変数がメインです。
ただ、売上反応分析の場合には、説明変数Xに業界全体の市場規模と関係する変数(景気などのマクロ変数)を入れる必要があります。
そう考えると、マーケットシェア反応分析の方が簡単そうに見えますが、マーケットシェア反応分析の難しいところは目的変数Yであるマーケットシェアのデータをどう作るのか、というところにあります。
マーケットシェアというデータを作るには、マーケット全体の売上規模が必要になります。そのためには、対象とするマーケットそのものの定義が必要になります。
マーケットの定義次第で、マーケットシェアは大きく変わります。
例えば、あるハイブリッドのコンパクトカー車のマーケットシェアを、乗用車全体の中で考えるのか、ハイブリッド全体の中で考えるのか、コンパクトカー全体の中で考えるのか、で大きくその値は変わります。
3つの消費者購買行動分析
購買メカニズムの把握やマーケティング活動の個々の消費者への効果測定などを実施する消費者購買行動分析ですが、色々なものがあります。
ざっくり以下の3種類あります。
- 購買生起分析
- 購買選択分析
- 購買量分析
購買生起分析とは、ある商品カテゴリーの購買がいつ発生するのかを、もしくは、一定期間にどのくらいの頻度で発生するのか、を分析するものです。購買生起モデルという数理モデルを構築することが多いです。
購買選択分析とは、ある商品カテゴリーの商品を購買するとき、どの商品を選択し購買するのか、を分析するものです。ブランド購買分析とも言います。ブランド選択モデルという数理モデルを構築することが多いです。
購買量分析とは、ある商品を選択し購買するときの購買量を分析するものです。購買量モデルという数理モデルを構築することが多いです。
この3つの分析を通し、広告・価格変更・販促・営業などのマーケティング活動に対する、消費者の購買生起メカニズムや購買選択メカニズム、購買量メカニズムを明らかにしようとします。
さらに、この3つの分析を統合した数理モデルを構築した統合モデルなどもあります。
今回のまとめ
今回は、「2つの市場反応分析(Market Response Analysis)」というお話しをしました。
市場反応分析(Market Response Analysis)では、広告・価格変更・販促・営業などのマーケティング活動に対する反応(売上や購買行動など)を分析します。
比較的やりやすく、多くの人に関心をもられやすいデータ分析・活用の1つです。
市場反応分析には、ざっくり2種類あります。
- 集計市場反応分析(集計レベルのデータ分析)
- 消費者購買行動分析(非集計レベルのデータ分析)
2つに共通しているのは、広告・価格変更・販促・営業などのマーケティング活動に対する反応を分析する、というところです。
例えば……
- どのくらい広告量を投下すると、どのくらい売上が上がるのか?
- テレビCMを止めると、どのくらい売上が落ちるのか?
- どのくらい価格を下げると、どのくらいマーケットシェアが増えるのか?
- マーケットシェアを大きく落とさず、どれぐらいまで価格を上げられるのか?
- 新聞の折込チラシの量の飽和点は? 最も費用対効果が最大化する量は?
……などです。
集計市場反応分析の場合、以下のことを明らかにするために実施することが多いです。
- 売上などのベースラインの測定
- マーケティング活動の効果測定
集計市場反応分析は、ざっくり以下の2種類あります。
- 売上反応分析
- マーケットシェア反応分析
消費者購買行動分析の場合、以下のことを明らかにするために実施することが多いです。
- 購買メカニズムの把握
- マーケティング活動の個々の消費者への効果測定
消費者購買行動分析は、ざっくり以下の3種類あります。
- 購買生起分析
- 購買選択分析
- 購買量分析
今回紹介した2つの市場反応分析(Market Response Analysis)には、色々な数理モデルが提案されています。
ただ、データを手にしたときに最初にやるべきは、データそのものを眺めることです。
基礎統計量(平均や分散など)を求めたり、集計したりグラフ化したりし、データと仲良くなることから始めます。
その上で、色々な数理モデルを構築し分析してみましょう。
色々な数理モデルについては、別の機会にRやPythonのコードとともに紹介します。