このコードは、元の時系列データと差分処理後のデータを比較し、差分処理がどのようにデータを変化させるかを視覚的に確認しています。差分処理は、時系列データのトレンドを除去し、データを定常化するために使用されます。

import numpy as np
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib

# 元の時系列データを生成
np.random.seed(42)
data = pd.Series(np.random.randn(100).cumsum())

# 元の時系列データに対し差分処理を実施
diff_data = data.diff().dropna()

plt.plot(data, label='元の時系列データ')
plt.plot(diff_data, label='差分処理後の時系列データ')
plt.legend()
plt.show()

 

詳しく説明します。

ライブラリのインポート

• numpy:数値計算を行うためのライブラリ。ここでは乱数生成に使用しています。
• pandas:データ操作や時系列データの処理を行うためのライブラリ。ここでは時系列データを扱うために使用しています。
• matplotlib.pyplot:データの可視化（プロット）を行うためのライブラリ。
• japanize_matplotlib:Matplotlibで日本語を正しく表示するためのライブラリ。

データの生成

• np.random.seed(42):乱数のシードを固定し、結果を再現可能にします。
• np.random.randn(100):平均0、標準偏差1の正規分布に従う乱数を100個生成します。
• .cumsum():累積和を計算します。これにより、ランダムウォークのような時系列データが生成されます。
• pd.Series:生成したデータをPandasのSeries形式に変換します。

差分処理

• data.diff():元の時系列データの差分を計算します。差分とは、現在の値と1つ前の値との差を指します。差分を取ることで、データのトレンドや非定常性を除去することができます。
• .dropna():差分計算の結果、最初の値はNaN（欠損値）になるため、それを削除します。

プロット

• plt.plot(data, label='元の時系列データ'):元の時系列データをプロットします。
• plt.plot(diff_data, label='差分処理後の時系列データ'):差分処理後の時系列データをプロットします。
• plt.legend():グラフに凡例を追加します。
• plt.show():グラフを表示します。

 

このコードの結果として、元の時系列データと差分処理後のグラフが表示されます。

定常性とは

時系列データの分析では、データが「定常性」を持つことが重要です。

定常性とは、時系列データの統計的性質（平均、分散、自己共分散など）が時間に依存せず一定であることを指します。

非定常なデータは、トレンドや季節性などの要因によって平均や分散が時間とともに変化するため、直接的な分析やモデル化が難しくなります。

差分処理は、非定常な時系列データを定常化するための手法の一つです。

差分処理とは

差分処理とは、時系列データの各値からその直前の値を引く操作です。これにより、データの変化量（差分）を計算します。

数式で表すと、差分処理後のデータ \( y_t \) は以下のように計算されます。

$$y_t = x_t – x_{t-1}$$

ここで、\( x_t \) は元の時系列データの値、\( x_{t-1} \) はその1つ前の値です。

トレンドの除去
差分処理を行うと、データのトレンド（長期的な増加や減少の傾向）が除去されます。例えば、累積的な増加を示すデータに差分処理を適用すると、各時点での増加量だけが残ります。

定常性の獲得
トレンドが除去されることで、データの平均や分散が時間に依存しなくなり、定常性を持つデータに変換されます。これにより、自己相関やモデル化が容易になります。

季節性の考慮
季節性がある場合は、単純な差分処理では不十分なことがあります。この場合、季節差分（一定の周期での差分）を取ることで、季節性も除去できます。

注意点

差分処理を行いすぎると、データの情報が失われる可能性があります。そのため、必要最小限の差分回数で定常性を確認することが重要です。

差分処理後のデータは元のデータの解釈が難しくなるため、分析結果を元のスケールに戻す際には注意が必要です。

差分処理は、ARIMAモデルなどの時系列モデルを適用する前処理としてよく使用されます。これにより、非定常なデータを定常化し、モデルの適合性を向上させることができます。